るる

ザ・サークルのるるのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・サークル(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

製作の第一報を目にしたときから、SNSの功罪について真っ向から描いてくれる作品! いま必要な物語! と、すごく期待していて、原作本を買って、マアまだ読んでないんだけど、予告編を見て『エクス・マキナ』の冒頭みたいだなと思って、エマ・ワトソンとドーナル・グリーソンの共演はいつか見たいな、なんて思いつつ、

公開時の評判がイマイチで、レンタルで。レンタルで良かったかな、なーんだ、結局、監視社会ディストピアを批判する、既視感のある、アメリカらしい映画だな、という印象。

ただ『ギヴァー 記憶を注ぐ者』でも思ったけど、あのアメリカが共産主義国的な社会システムに興味を示し始めている、憧れを垣間見せている、というあたりは面白いな、バーニー・サンダース的思想の台頭やテロとの戦いへのウンザリ感も関係しているのかな、
というか、日本は資本主義と共産主義の良いとこどりの国なんて言われてた時代もあったけど、いまや資本主義と共産主義の悪いとこどりの国で、なんだろうなあ、この、一方が衰えると一方が盛える不思議…ザ・サークルの会社ロゴが日の丸を思わせたのは…さすがに偶然か…
いやしかし、各国の社会モデルを並べて最適な社会システムについて、そろそろAIが教えてくれる時代に突入しそうと思うと、すげえ時代よな…

余談はさておき。劇場でこの、プライバシーにズカズカ踏み込まれる感じを味わってたら、気色悪さに耐えられなかったかも。

あの面接が、めちゃくちゃチャンとした、頭の良い会話でね。

にも関わらず、あまりにも価値観の違うコミュニティに入ってしまったと気付く、違和感…週末の予定を詮索され父親の病名なんてデリケートなことをズカズカと尋ねられ…あのシーン、薄ら寒さを感じて、扱ってる題材は違うけど、なんとなく『ゲット・アウト』を連想しちゃった。でも私はああいうのに一番ホラーを感じるのかもな…と思った。ブラック企業っぽくて、非常に居心地が悪い。

パワハラとはいえない、善意の同調圧力というか…カルトに洗脳される感じ、なまじ、そこである程度成功してしまって、適性を見出されてしまって、そのコミュニティやリーダーに対して尊敬の念を抱いているからこそ、脱出しにくい、…チョット身に覚えがある…

アメリカの選挙制度って奇妙で、あれだけ民主主義と自由を謳う、政治運動が活発的なイメージのアメリカだけど、投票手続きがめちゃくちゃ面倒なんだってね。選挙とSNSを結びつけるアイディアは今後も定期的に議論されるだろうなと思う。日本での導入は…ちょっと待ってよ、って感じかな…

SNSで犯人探しする怖さについてはドラマ『ニュースルーム』が丁寧に批判的に描いてたなあと。
SNSを利用して恋愛成就を応援する空気、あれは気色悪いね。
交通事故、あれはパパラッチに追われたダイアナ王妃を連想…

なんだろうな、常に監視されるストレスについての話、パパラッチに追われるスターにとっては、きっと身近な題材で、かつてパパラッチにスカートの中の下着を撮られたことがあると告発したエマ・ワトソンに、親和性が高い題材なんだろうとは思うんだけど、

作品として、うまくいってない感じ…一般の観客にとって共感を得やすいレベルにまで内容を落とし込めてない感じ…難しいね…

車の自動運転化の可能性にも触れられて、クライマックスではスノーデンの告発を念頭に置いているのであろう、「もはやプライバシーは存在しない」宣言。

まあしかし、後味の悪いこと! 個人的には期待外れ、題材に関する情報量という意味でも既知のことが多かったもんで、もう一歩先まで踏み込んで新鮮味を提供して欲しかったし、脚本のストーリーも劇的さに欠けて不満。

エマ・ワトソンとトム・ハンクスを起用したにしては凡庸な内容に収まっちゃったなあ、という感じ。いや、エマ・ワトソンっぽいっちゃぽいのか。しかし、わたし彼女には若きフェミニスト、親しみやすいアクティビストのひとりとして、もう一段階進んだキャリアを築いてほしいのよね…

個人的には、女性がSNSをやってると、めっちゃくちゃセクハラ発言される、唖然とするほどのミソジニーをぶつけられる、という点を誤魔化さずに描いてくれなきゃ、信頼できん、という気持ち。ネットで私生活を公開している女性の目には、男性が何気なくSNSやってるぶんには見えないであろう世界が広がってることをきちんと描いてくれなきゃ、嘘だと思った。

せっかくの題材に対して、アプローチが半端でもったいない。でも、ある時代の記録としては、これも必要な映画だったかな、と。
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