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マーシュランドのunknownのレビュー・感想・評価

マーシュランド(2014年製作の映画)
4.5
フランコ独裁政権の爪痕が残る、民主化して間もない1980年スペインのある田舎の村(湿地帯=マーシュランド)が舞台。首都マドリードからそれぞれ飛ばされてきた訳ありの刑事、フアンとペドロ。その辺鄙な土地で少女達が犠牲となる猟奇的な殺人事件が起こり、2人が捜査を開始していくのだが、、というストーリー。

陰鬱で閉鎖的な村の空気と生々しく立ち込める猛烈な悪意。独裁政権は消えても簡単には癒えない人々の心。反政府寄りの若手刑事ペドロと元秘密警察の中年刑事ファン。田舎から出たいとひたすら望み待ち続ける少女たちと彼女たちに襲いかかる性的倒錯者たち。

出口のない絶望感と喪失感、深い孤独。見せかけの愛とセックス、ドラッグ、暴力、裏切り、背徳…。ひたすらに暗く不穏な要素をスペインの湿地帯という、美しくも奇妙な風景と共に淡々と綴っていく、私的には完全に大好物の内容でした。



(ネタバレ)


殺人事件の犯人としては、ハンサムな村の青年・ニキが標的の少女を狩猟宿に連れてくる役目。コトを終えた後に狩猟宿の従業員でホテル仕事の世話人かつロリコンのセバスチァンが少女をレイプ、一緒にレイプしながら拷問を加えたりしてたのが、あの村の有力者であることは間違いないと思う。(右手にはめた時計、香水、柔らかい手というヒントしかないが)実際の殺人実行犯はセバスチァンなのかな?

村の有力者が犯人の1人との確信がありながら(有力者と握手した後、手の匂いを嗅いだ時に浮かべた口元の笑みの怖さ…)もう1人の犯人セバスチァンを刺殺しその口を封じた刑事・フアン。そしてその後想像できるのは権力者(有力者)側に付き(あるいは脅迫し)、その利権や庇護や金銭等を利用しつつ、独裁政権時代に秘密警察にいたときと同じく、権力を傘に己の嗜虐性を思う存分行使するフアンの姿。フアンは間違いなく村の有力者に自分と同じ臭いを嗅ぎとっていたのだと思う。

若くて将来のあるペドロは腑に落ちない思いを抱えながらも首都に1人戻っていったが、急速な民主化の波に乗れなかったフアンがあえて時代に取り残された遺物のような村にとどまり、独裁政権時代の残り火のようなものを再び味わいつくすことを選択した事の恐ろしさが、本作の主題かなと思いました。

そしてラストの十字路(十字架)の俯瞰シーンは、「暴力脱獄」と同じ…?作中、十字架が重要なモチーフとして使われてたので、きっと十字架解釈で合ってるはず…。

フアンがホテルの室内で目撃した美しい鳥や湿地帯で見た鳥の群れは、まだ残ってたフアンの良心、もしくは民主主義のメタファーだったのかな?単にフアンの秘密警察時代の呼び名=カラスとの対比なのかもしれませんが。フラミンゴ🦩も美しかった…
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