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永い言い訳のkabcatのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
3.6
この監督の作品の登場人物の多くは、人間としていやな部分を持っている。けれども彼らは感情移入できない人物たちではなく、それどころかこちらにもそういういやな部分があることを感じさせるように描かれる。特に幸夫が陽一や子供たちに対してもっともらしく語る姿は、最後まで嘘くさく薄っぺらく思えてしまい、最後に発表する小説もおそらく美化された内容だろう。こうして観終わったあとには、爽快感やしみじみさせる余韻もなく、どちらかというと後味のわるい宙ぶらりんな気分にさせられる。妻の死を経てのビルドゥングスロマンに見えて、実は成長していない、というのがこの作品の本心なのではないだろうか。そこが脚本のうまさであり、監督のいじわるなところである。いやな感じの大人を演じる大人の俳優たちのなかで、子役たちのうつくしさが光る。また脇役の黒木華や池松壮亮の使い方が贅沢。
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