よしまる

ヒトラーの忘れもののよしまるのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.4
 第二次世界大戦中の5年間、ドイツに占領されていたデンマークの海岸沿いに、ドイツ軍によって200万個の地雷が埋められた。

 終戦後デンマークは、捕虜となったドイツの少年兵にこの地雷撤去作業をさせた、という史実に基づいて綴られた辛く悲しい物語。

 戦争を題材にした映画の中でも、地雷の撤去作業ほどヒリヒリする映画はない。しかもベテランの処理班を描いた「ハートロッカー」とは違い、この映画で作業をするのは素人も同然の子供たちだ。
 しかも14人で4万5千個を処理するまでドイツには帰れないなんて。

 映画だからって、子供相手に絶対に爆発なんてしないよね?ビビらしておきながらも、ちゃんと撤去が進むんだよね?お願い、頼む!

 そんな願いも虚しく、ドーンと爆発は起こる。うわぁ、こりゃとんでもない映画を観てしまった!と思いながらも、夢を語り合う少年たちの純粋な瞳、イギリス空軍帰りのデンマークの兵士との触れ合いなど、心をギュッと掴んで離さない話法で完全に世界に入り込んでしまう。

 と、油断するとすかさずドーン💣🔥

 途中で、あー、もう無理、観るのやめよう😭😭って自然と声に出して言ってしまっていた💦

 結局、最後まで観てしまうのだけれど😱

 原題は「under sanded」(砂の下)。
これは1998年の小説「under tvang」(強制の下に)から取られているらしい。ドイツ兵捕虜に強制労働をさせていた事実を白日の元に晒したとされるこの小説があってこそ生まれた映画ということだろう。
 また、英語タイトルは「land of mine」。私の国、と、地雷の国、のダブルミーニングで、ドイツに占領されたデンマークの想いが詰まっている。

 邦題「ヒトラーの忘れもの」は、ドイツ軍→ナチス→ヒトラーという図式で煽れば集客できるだろうという魂胆があからさますぎて萎えるところだけれど、北欧史に詳しい村井誠人氏によると、ヒトラーの忘れものは「ドイツが埋めた地雷」であり、「ドイツ兵の捕虜」そのものであるとともに、デンマーク人でさえ捕虜のドイツ兵にそのような非人道的な労働を強制した、その行為こそが、ナチスの残虐行為、もとい、ヒトラーそのものではないか、とおっしゃっていてナルホド!と思った。

 占領された人々に憎悪を植え付け、子供を容赦なく過酷な労働に就かせて命まで奪うことも厭わない心を宿してしまう精神がほかならぬ「ヒトラーの忘れもの」と。

 忘れもの、っていうか「ヒトラーの残せしもの」というニュアンスになるのかもしれないけれど、戦争が終わってなお、人の心は蝕まれていくものなのかと、観終わったあとに重苦しい気持ちがどんよりと背中にのしかかって動けない。

 子供たちの演技が皆めちゃくちゃ上手いので、そのぶん感情移入も半端なかった。

 映画は史実とは違う面もあり、かなり脚色もされているものの、こうした悲惨で非道な出来事が行われ、戦後になってからも数百人の未来ある子供たちが命を落としていることは紛れもない事実。
 そのことを知れただけでも、観てよかった。