Jun潤

バービーのJun潤のレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.5
2023.08.12

マーゴット・ロビー×ライアン・ゴズリング。
幼少期には専らアニメやヒーローものの人形をぶつけ合わせて闘いごっこしていた身としては、バービー人形にもリカちゃん人形にも疎いです。
しかし予告のコミカルさに惹かれて鑑賞。
作品の中身には関係ないですが、今作と日本公開未定の『オッペンハイマー』で特定の層の逆鱗に触れるミームが発生していましたね。
不謹慎かもしれませんが個人的にはちょっと笑いましたわ。

いつも少女の側にあった人形の存在。
かつてそれはいつも赤ちゃんの姿をしていて、少女達はお母さんの真似事をしていた。
そんな時に登場したバービー人形。
綺麗な顔、理想的なプロポーション、どんな職業にもなれる完璧な存在として、少女達の夢と希望になったバービー。
物語の舞台は、そんな様々なバービー達が住むバービーランドから始まる。
自分も隣人もバービー、街に出てもバービーだけ、パーティーにもバービーが集まる。
何もかも上手くいき、完璧な日々が続いていく、はずだった。
定番バービーが死を認識した瞬間、完璧な日々は綻び始め、ヒールで上がっていた踵が地面についてしまう。
そんな状況から脱却するため、脚は広がり顔には落書きをされているバービーの元に行くと、現実世界「リアル・ワールド」に行き自分の持ち主の問題を解決する必要があることを告げられる。
そしてバービーは、勝手についてきてしまったケンと共に、現実世界を訪れるが、そこにはバービーランドとは全く違う世界が広がっていたー。

おーっと、ちょいと男がバカにされすぎではないですかねぇ。笑
コミカルな予告とは打って変わって、中身はテンポこそ軽いものの、題材はフェミニズム推進や男社会の揶揄、それらを皮肉の効いたブラックジョーク全開で描いていく感じでした。
個人的にはどちらかというと分かりやすいコミカルなシーンよりも、メタネタにゲラゲラしたり、アニメとも実写とも言えない映像表現に感嘆としたりしていました。

バービーランドがどのように出来たのか、あの世界に全てのバービーがいるのか、それとも今作に出てきたのはグロリアにとってのバービーランドで、バービーの持ち主それぞれにバービーランドがあるのか、想像を掻き立てられました。
見方によっては『トイ・ストーリー』感もあって良かったと思います。
なにより少女達に遊ばれるバービー主体でケンが添え物程度だったバービーランドとは正反対に、現実世界はおじさん達がそれぞれの役割通りにしか動けないような、言うなれば“おじさんランド”だったんじゃないかと思える描かれ方がなかなか凝っているように感じました。

表立って描かれていたのは上述の通りフェミニズムなどの印象が強いですが、他にもバービーが現実世界で初めて会話した老年の女性に何かを感じているような表情をしていたり、バービーの生みの親でもあるルース・ハンドラーが素敵な女性に見えていたりして、完璧で老いることのないバービータウンに暮らしていたバービーに対し、年齢を重ねること、それによる変化を受け入れることで出る魅力も描かれていたように感じました。

しかし、なあ、、。
序盤のバービーランドでのケンに対する不遇っぷりに始まり、アメリカはどうか分かりませんが、個人的な目線ではそこまでじゃないだろと感じるコテコテな男社会の描写が気になりましたね。
その結果としてケンによる革命や洗脳が始まってしまうわけですが、そこに関してだけはぶっちゃけ男の弱点をグサグサ突いてきていて逆に笑ってしまいましたよ、悔しい、、。
一応はバービーランドも現実世界での女性の社会進出のように、ケンの立場も向上していくのかもしれませんが、しばらくは現実世界のように縛りが強いんじゃないかなとも思いますね。

個人的な解釈としては今作の結末を経ても、どこかの少女がバービーと遊び、バービーに想いを馳せる限り、バービーランドは存在し続けるんじゃないかなと思いますし、そうであって欲しいなと思います。
Jun潤

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