カツマ

ノクターナル・アニマルズのカツマのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.9
強烈なオープニングは何の意味があったのか。現実と小説との境目はどこなのか。そしてあのエンディングの意味とは。連続するクエスチョン。そこに込められた禍々しい感情。創造するしか、読み解くしかないのだ。不気味な音像はフィクションの中の暴力描写とリンクして、奇妙な気色悪さを垂れ流し続ける作品。実は意味のなさそうなものがヒントになっており、それらに意味を感じることができるかどうか。
ジェイク、エイミーの両者とも幸の薄い役がよく合う。しかし、実は一番怖い役は警官役のマイケルシャノンだったのではなかろうか。各々に潜む狂気の在り方を考えさせられた。

新進芸術家のスーザンは個展の成功もあり、周囲から成功者として認知されている。だが、夫との関係は冷え切っており、ブルジョワな生活の中にあって満ち足りていないものを感じてもいた。そんな中、彼女の元夫エドワードから、彼の書いた小説『ノクターナルアニマルズ』の原稿が届けられる。冒頭にはFor Susanの文字。
読み進めていくと、その小説はまるでエドワードからスーザンへのメッセージかのような異形の内容。しかし、それは小説として素晴らしかった。次第にスーザンの中に未だ燻り続けるエドワードへの想いがふつふつと湧き上がっていくのだが・・。

サスペンスの様相を呈してはいるが、実はホラーである。それは精神面に語りかけてくる薄気味の悪い気色悪さとなって鑑賞者にまとわりつく。主人公のエイミーアダムスと小説内に出てくるジェイク演じるトニーの妻が非常に似ており、それもあって既視感は倍増。段々現実と虚構との境界線までもが曖昧になっていくのだ。
アートを模した映像はトムフォードの世界観で完全構築。実はその中にヒントがあるので見逃しは厳禁。誰の作為がこの物語の中心か、最後のカットに全てが込められているような気がした。
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