カツマ

ヴァチカンのエクソシストのカツマのレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
3.8
確かに神と悪魔はそこにいた。人の心に巣食う幻。それに打ち勝てるかどうか、エクソシストは壮絶な闘いの果てに自身の闇と対峙する。地下の底に蠢くのは何?悪魔の本当の目的とは何なのか?祈りこそが最大の武器。今、敢然と使者は葬るべき者の名前を告げていた。

バチクソの略称でここ日本でも一部の界隈に熱狂的なファン層を獲得した本作。メガホンを取ったジュリアス・エイヴァリーは『オーヴァーロード』『サマリタン』など、カルト的な作品を何本か撮ってきた監督で、レトロ風味なスリラーを撮るのが上手い。主演にはかつてはハリウッドスターとして名を馳せ、現在は様々な役柄で我々を驚かせてくれるラッセル・クロウ。何とこの内容で実話をもとにしており、主人公のガブリエーレ・アモルトが遺した著書を原作としている。蓋を開ければ、非常にオーソドックスなエクソシスト映画。多くの鑑賞者にリーチできるシンプルイズベストな内容だった。

〜あらすじ〜

教皇直属のエクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父は、とある悪魔祓いを問題視され、ヴァチカンへと呼び出されていた。アモルトは実際に悪魔祓いを行ってきた本物のエクソシストだが、それを公にすることはできず、件の悪魔祓いも精神病と表現して報告するほかなかった。
そんなアモルトを周囲の神父連中の中には好ましく思わない者も多いが、同時にアモルトを高く評価する人物も存在していた。その最も巨大な一人として教皇がいた。教皇はアモルトに悪魔祓いの新たな案件を依頼し、スペインの田舎にある修道院へと彼を向かわせる。その荒廃した修道院には建物の持ち主のジュリアと二人の子供がおり、子供のうちの一人、ヘンリーは自傷行為を繰り返していた。現地に到着したアモルトは、ヘンリーに悪魔が乗り移ったことをすぐに察知して・・。

〜見どころと感想〜

今作はザ・エンターテインメントと呼びたい王道感溢れる悪魔祓いスリラーである。これまでもオタク臭全開のスリラーを撮ってきたジュリアス・エイヴァリーの懐古的な灰汁の強さがもろに出ており、ホラー描写は非常にレトロ。光の使い方や舞台設定、大袈裟な演出など、70年代〜80年代あたりのホラー映画を出汁に使っている雰囲気もあり、良い塩梅の安っぽさが楽しめる。さほど怖くはないため、ホラーが苦手な人にもオススメ。大衆映画として機能できる間口の広さは魅力的でもある。

キャストはほとんどラッセル・クロウ一人に全ての重荷がのしかかっているような布陣となっていて、クロウのキャラの圧倒的なインパクトによって本作は作品として成立している。これがもし凡用な俳優だった場合、C級映画になっていた可能性もあり、主演のキャスティングが本作の全体像を決定付けている。ホラー映画への出演が多いコスタリカ出身の俳優ダニエル・ゾヴァットは、今作で日本での知名度を高めたはず。教皇役のイタリアの名優フランコ・ネロは80代ながらまだまだ精力的で、威厳たっぷりに教皇役を演じていた。

この映画は続編が決定しており、ラッセル・クロウも続投する。日本でもカルト的な人気を獲得しただけに今後の展開が楽しみだが、次作でもクロウ演じるガブリエーレ・アモルトの一人舞台となることだろう。とても良質なラッセル・クロウ映画であり、安心感すら漂わせるエクソシスト映画である。意外な展開はなく、面白いほど分かりやすい。またあの巨体が小さなバイクで移動している姿を見るのが楽しみである。

〜あとがき〜

とてもシンプルなエクソシスト映画でビックリするほど捻りが無く、ストーリーも読みやすい作品です。が、ラッセル・クロウ演じるガブリエーレのキャラクターのおかげで、ヒーロー映画のような趣で楽しむことができました。なので、エンドロールのテロップの後にアフタームービーが出るんじゃないかと期待してしまったほどでした笑

個人的には先月末に第二子が誕生したこともあり、またしばらくは映画を鑑賞するペースがかなり遅くなると思います。何とかオスカーノミネート作品くらいは劇場で観たいですが、そのあたりも未定ですね。とりあえずは一歳の長女と産まれたばかりの次女の育児を夫婦で頑張っていきたいと思っています。
カツマ

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