完璧すぎて、嫌い。
まるで約二時間、とびきりのイイ男に遊んでもらって最後に「キミなんて愛してない」と囁かれたみたく。
親子三人の痛ぶられシークエンスが情感上の貯金（ナイスなトラウマ）となって後半まで私たちを引っ張り続けた。
そろそろ貯金の目減りが目立ちだすって頃に台頭した刑事さんの、ちょっぴり斜めってる粗野キャラが、ハラハラをほどよく再リードしてくれた。
最後、受け取った“たすき”を主役美女が「さあ、逢いに行くわよ」と美しく掛けこなす。
けれど、…………観客よりも作り手が圧倒的優位に立ってるっていう掟を一方的暗転によって知らされて私、憮然。
取り澄ましたこのブランニューな秀作と、変人すぎる凛血（りんち）さんの旧作「ロスト・ハイウェイ」のどっちかとケッコンしなきゃいけないとしたら、私は隙だらけでブサイクな「ロスト・ハイウェイ」の方を選ぶかもね。理由は、これから考えます。
それにしても、「ロスト・ハイウェイ」の方はアオった不良運転手を路上でボコって教本通りに説教して痛快だった。
