ぎー

天空の城ラピュタのぎーのレビュー・感想・評価

天空の城ラピュタ(1986年製作の映画)
4.5
「土から離れては生きられないのよ。」
宮崎駿特集1作品目。
何度見ても凄い作品。
今回は久しぶりだったのでストーリーの記憶も曖昧で、新鮮な気持ちで見ることができて、ずいぶん感動してしまった。
科学の力は便利で素晴らしいものだけど、それを使う人によっては、人々を幸せにもするし不幸にもする。
当たり前のことだけど、改めて心に刻まされた。
「見ろ!人がゴミのようだ!」とか、「バルス!」とか有名になりすぎているけど、全ての人にTVCMなんかで没入感を阻害されることなく、世界観をしっかりと味わって欲しい傑作中の傑作!

冒頭、ドーラ一家が政府の飛行船を襲撃する。
シータは政府の飛行船に捕らえられている。
飛行石はシータにとっても宝物だけど、ドーラや政府も狙っている。
いきなり戦闘が始まって、何の説明もない。
初めて見た子供達は絶対にちんぷんかんぷんだと思う。
でも、変に説明が丁寧すぎることは映画の世界観に入り込むのを邪魔しちゃったりする。
ジブリの名作達はそこを割り切っていて、大人でもわざとらしさとは感じることなく映画を楽しむことができるのが良いところ。

やっぱりこの映画も世界観の舞台描写が素晴らしすぎる!
全ての飛行機が、全ての登場人物が、全ての演出が魅力的!
飛行石がどういう物体なのか全く分からない状態でも、シータが地上に舞い降りてくる場面は本当に神秘的で釘付けになっちゃう。

この、シータの正体や飛行石の正体が謎に包まれたまま序盤のストーリーが展開していくのも凄い!
一体シータは何者なのか?
飛行石とはどんな価値があるものなのか?
僕達は気になって仕方ない。

それを代弁してくるのが、最高に魅力的な主人公パズー。
決して頭脳や体力が抜群な訳ではないけど、正義感が強くって、難しいことを考えずに正しいことができちゃうスペシャルな男の子。
流石に石頭すぎるとは思うけど。

パズーがシータを守ってドーラや政府から逃げる場面は、スピード感が本当に凄い!
街の人が2人を守って、ケンカしてくれるのもワクワクした!
石に詳しい老人が明かりを全て消して飛行石の輝きと力を明らかにした場面は本当に美しかった。

分かりやすい悪党のドーラと、不気味な悪人のムスカというキャラクター設定がまた最後に良かった。
そして捕らえられたシータは、昔教わったおまじないを唱える。
ロボット兵が暴れ出し、やってることは殺戮なんだけど、やっぱりシータや飛行石の力が気になってワクワクしちゃう。

最初っから悪人っぽくない感じは出てきたけど、後半のドーラは本当に良い奴。
親がいないパズーとシータにとって、親代わりみたいになっていく。
夜間の宿直をするパズーとシータの会話をドーラ一味が聞いてる場面なんか、ただただ心が温まる。
ラピュタに辿り着いてパズーとシータは感動してるけど、同じように僕らも感動させられる。
本当にラピュタがあって良かったと。
そして、何で美しい場所なんだと。
恐ろしい殺戮兵器にもなるロボットは、2人のグライダーの重みから鳥の巣を守り、王家の墓を見守っていた。
結局悪いのはいつも邪悪な人間の心。

終盤とうとう飛行石が本領を発揮する。
シータは驚いていたけど、それは僕らも同じ。
こんなレベルのものがあったら、たしかに世界も支配できちゃうかもしれない。
何だか核の技術を喩えているんじゃないかって気がした。

1番印象に残っている場面は、もちろんシータとパズーが滅びの呪文を唱えるシーン。
どんなに偉大で貴重なものであっても、間違った使い方をする人間の手に渡るくらいならそんなもの無い方が良い。
あまりにもラピュタが美しかって、滅びの呪文なんて唱えないで何とかできないものかと、一瞬でも思っちゃった僕の心はきっと汚れてるんだろうな。
2人の心は本当に清らかで、世界を救うために呪文を唱えることに一瞬の迷いもなかった。
その重責を果たすべく、お互いを信じ合っている2人の友情はとても美しかった。
滅びの呪文を唱えても全てが失われる訳ではなく、平和な上層部は保たれていて救われた気がした。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/天空の城ラピュタ
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