Ren

ルームのRenのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.5
楽しみ方として合っているのかは分からないけど、世界仰天ニュースみたいで面白いなぁと思いながら観てました。ジェイコブ・トレンブレイはアカデミー主演男優賞にノミネートされるべきだった。

自分の全てだった「世界」が実は「世界」ではなかった、という『トゥルーマン・ショー』的なお話。世界から飛び出すことのそれ自体をゴールとせず、世界とは何なのか、その世界で生きていくとは何なのか、を丁寧に丁寧に描いていきます。

初めて地面を歩き広い空を見上げたジャックの表情一つひとつがとにかく素晴らしく、驚きと不安と恐怖が綯い交ぜになった形容し難い感情が手に取るように分かりました。これが伝わらないと映画としても説得力を欠いてしまうので、やはり役者の功績は大きい。
今作で最もダイレクトに揺さぶられる感情は 喜びや悲しさ以上に “苛立ち“ だったように感じます。犯人に対しても、世界を受け入れようとしない(できない)ジャックに対しても、後半のジョイの某シーンに対してもマスコミ始め周囲の人に対しても、観客のこうなってほしいという願望とどこか齟齬がある。

寄り添う形での愛を確かめていく、母子の絆の構築と歪みと再構築を印象的に描くことに成功した映画です。Hello worldからGoodbye worldまで、かつての自分の世界から離れたとしても 生きていこう/生きていける と思えるような尊い関係についてフォーカスを当て、それが「助け合って生きること」「社会に対して、親と子とはどんな関係なのか」という普遍的な物語へ昇華されていました。

その他、
○ おもちゃの遊び方が分からないのでずーっとスマホを見て過ごす、というのがリアルだと思った。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










へやの中では、真実を知らされパニックになるジャックと彼をリードし守るジョイの構図だったのが、へやを飛び出すとそれが逆転します。喜ばしいニュースの裏側で、世界を知らなかったジャックは順応していき、世界を知っているジョイは順応できなかった。
かなり危うい糸で繋がれた母子が、5年間で築いた信頼関係で助け合っていこうと前を向くまでの話。ジャックはへやで過ごした歳月を物語る長い髪を切り落とし(過去と決別し)、母親を助けることを選びます。

中盤のへや脱出シーンは基本的にカメラはジャックの目線の高さでしたが(一部クレーンショット有り)、ラストではカメラが高く上がりへやの外の世界を感じさせます。過去(へや)とようやく決別でき、この世界で生きていくのだと思わせるショット。ジャックはへやに向かって “Goodbye“ と言うが、それこそが彼にとっての “Hello“ でもある。