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アンジェリカの微笑みのRiNのレビュー・感想・評価

アンジェリカの微笑み(2010年製作の映画)
3.4
監督マノエル・ド・オリヴェイラ氏、なんと1908年生まれ。丸々一世紀、時代を映した瞳が作り上げるのはどんな作品かしら、と蓋を開けてみれば、なんとロマンチックなラブレターでした。酔いました。
1950年代に初稿が製作され、その後二度の大戦を経てさらに推敲が重ねられ、まさにヴィンテージとなった映画。主演リカルドは監督の孫息子。おそらくは、監督自身の分身でしょうか、美しき死者・アンジェリカにそれは猛烈に恋します。ここまで純粋な、見目への恋なんてあるんでしょうか。これは恋ではなく、もっと純粋な美への思慕に見えました。
そんでもってさらに、ここに宗教的なあれこれを加えます。これはもちろん監督自身がホロコーストを目撃したことが大きくかかわっているのでしょうが、それよりも、これは彼と彼女の間にひかれた大きな壁のひとつに見えました。
不思議なカメラワークと幻想的な映像に引っ張られがちですが、これってば「ロミオとジュリエット」なんです。それも、青年の妄想の中だけの。
やー変態だなあ。美しき変態の大天才。大老人はこの後三本も映画撮っているんですが、日本公開はいつになることやら。
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