へたれ

ナショナル・シアター・ライヴ 2016「人と超人」のへたれのレビュー・感想・評価

3.6
哲学とコメディの拮抗って、何かに似ていると思ったら、モンティパイソンのスケッチみたい。
レイフ・ファインズを始めとする、畳み掛けるような哲学問答の応酬が、鋭い風刺に映る瞬間もあれば、過剰なナンセンスさにも映った。スペイン人の盗賊を演じたティム・マクマランの顔が、若い頃のテリー・ジョーンズにちょっと似ていることもあって、二幕の地獄のシーンはモンティパイソン度が特に高かった。
レイフ・ファインズがこれだけの台詞量を息も切らさず明瞭にかつ軽妙に操る姿は本当に素晴らしかった。それに比べると、相手役のインディラ・ヴァルマはやや力不足。台詞で言われるほど大蛇にも象にもなっていなかった。
演出が現代化に成功しているかは微妙。100年前の社会風刺なので、やっぱり戯曲の古さは否めない。その代わり、時代性が希薄な地獄のシーンは、現在でも十分通じた。
プロセニアムアーチ式の典型的な舞台装置で、映像作品としては特に面白味なし。この舞台を観たい人向けの代用としては満足できた。
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