へたれ

落下の解剖学のへたれのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7
良かったとこ1 見せないことへのこだわり
法廷ミステリーと見せかけて、人間の真実など明らかになったりしないという、文学作品のようなつくりが面白かった。息子が視覚障害を負っているという設定や、回想シーンで見せるところと音声のみにするところの判断や、傍聴席からあえて見切れるような視点を多用するところに至るまで、観客に何を見せないかということを考え抜いて作られている。

良かったとこ2 サンドラ・ヒュラーの多層的演技
最初から最後まで、サンドラ・ヒュラー演じる主人公が、夫を殺したようにも殺していないようにも見えるという演技がとても良かった。この人の演技のおかげで、真相が宙吊りのまま2時間半も続くという映画が可能になっている。

ダメだったとこ 法廷におけるベタな演技
法廷における検事の立ち回りはステレオタイプな法廷ドラマに出てくるような自己陶酔型で、検事が喋り始めると途端に現実とかけ離れた論争バトルのようになってしまっていた。演技だけの問題ではなく、推測と事実をめぐるありきたりなセリフの応酬など、脚本としても問題があった。
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