けーはち

帰ってきたヒトラーのけーはちのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
4.0
アドルフ・ヒトラーが不思議な力で2014年に復活。TV屋が芸人として彼を売りこむも現代にマッチした演説が真に迫りたちまち大人気に──というブラック・コメディ。ヒトラーが現代の国際情勢をボロクソに言う冒頭から、彼をよくできたコスプレ物真似芸人だと面白がる群衆と本人の温度差、そして彼の言葉が意外と支持を受けてしまったり、逆にネオ・ナチにボコられたりする皮肉には、終始引いた笑いが出てしまう。21世紀の技術に適応する柔軟性や、カリスマ支配者たり得たヒトラーの人格的魅力の一端も垣間見え、また彼を題材にした過去作パロディ(特にわなわな震えながら、メガネを外す『ヒトラー〜最期の12日間』のシーン)もあって非常に楽しい。反面、敵とみなせば瞬時に冷酷非情さを見せる場面は滑稽なのに寒気がする。ヒトラーはみんなの心の中にいるのだ。主演オリヴァー・マスッチの怪演はお見事。