ぴのした

パーティで女の子に話しかけるにはのぴのしたのレビュー・感想・評価

3.8
パンク青年と宇宙人の少女の一夜の恋を描く新しいボーイミーツガール映画。

青春映画なのにえ〜〜宇宙人ってどうなの?って思うじゃん、でもよくよく見ていくと、宇宙人だろうが地球人だろうがそんなに違いはなくて、この映画が描いてるのは一貫してただ親から縛り付けられた若者たちの反抗と恋と青春なんだと気づかされる。

主人公のエンたちはイギリスの保守社会で暮らすパンク青年。父親に捨てられ母親はあーしろこうしろと小言がうるさい。エンが出会った宇宙人の少女ゼンも、数日後に親に食べられるという宿命を背負っていた。

ただ、想像以上に宇宙人が宇宙人宇宙人してるから「宇宙人って設定ってだけで中身は普通におしゃれ青春映画だろ〜?」と思って見に行くと痛い目にあう。

ただ僕はわりとこの宇宙人の演出が好きで。服装は変だけどギリちゃんと服ではあるし、宇宙人もエイリアンみたいな爬虫類とかじゃない見た目普通の人間だし。映画だと編集とかで今どき何でもありだからCGでもかぶりものでも使っていいのに、あえて人と服装と行動だけで宇宙人感を出しているのが面白かった。舞台とかダンスとか、表現方法が限られている芸術における宇宙人の表現みたいだった。宇宙人がバリケード張ってるとことか、ところどころ笑えるシーンもあって楽しかった。

パンクの劇中歌がよくて一部むちゃくちゃノれる。トレスポ的な。エンとゼンが歌うシーンとかも最高だった。あとパンク青年たちが宇宙人のアジトに乗り込むところもむっちゃ良かった。設定にクセはあるんだけど展開はわりとしっかり王道のボーイミーツガールで、変わり種なのに安定感がある。

そして何よりエルファニングが至高。特に前半、エンといちゃつくシーンがやばい。血の出た指を舐めたりトマトを一緒にかじったり口と口を合わせね大声で叫んだり。この透明感と異星人感。画面から目が離せなくなる。

監督曰く「異性が異星人だったあの頃」を描いたらしい。異性が異星人…うまいこというよな〜〜。なんかそれを聞いてこの物語自体がメタファーなんじゃないかと思った。実は普通の男の子と普通の女の子の出会いと別れなんだけど、当事者にしてみればそれは異星人との出会いのようなものだったという。

「自分とは違う存在」という点で宇宙人と女の子は男の子にとっては同じようなもんで。そういう意味でもエルファニングのキャスティングは最高よな。あの常人離れした独特の空気感はまさに宇宙人のようなつかみどころのなさがある。

普段青春映画ってストーリーが当たり障りなさそうで全然見ないんだけど、こういう変わり種だとかなり面白くみれた。SF要素を許せる人ならおススメ。エルファニング好きは必見。