nori8

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のnori8のレビュー・感想・評価

3.9
主演男優賞ジェイコブくん!
一回り表現力の幅を広げた。
「ルーム」のひたむきさと
「ワンダー」の天真爛漫さに加え
抑えた表情と感情表現が光る。

若くして突然命を落とした
スター俳優に何が起きたのか?
サスペンスタッチの作品と思いきや
完全なるヒューマンドラマであった。

自らのイメージを守り抜くため
“偽りの自分”と葛藤し続ける
スター俳優と、それをテレビを
通じて羨望の眼差しで見つめる少年の
間をつないだ手紙という“運命の糸”

それは文通でもあり
自身の孤独と迷いを告白する
唯一の手段でもあった。

世代や境遇がどれだけ違っても
母と息子の絆には
凛とした神々しさが宿る。
母は息子に無償の愛を注ぎ
息子は母をいたわり慈しむ。

愛するがゆえのすれ違いとわだかまり…
ある日、学校の課題として
息子が綴った作文が、
その絡まった糸を一気に解いてゆく。
互いに名を呼び駆け寄る
雨のシーンが今作のクライマックスだ。

25年前、「レオン」で天才子役として
脚光を浴びたナタリー・ポートマンが
満ちあふれる母性で息子を抱くその姿に
クラクラするほどの感動を覚えた。

音楽と色使いがとても繊細で美しい。
カットバックと独白の多用にも
退屈を感じさせず、
スムーズに感情移入できる。

子供を愛する親として
あの日の少年として
どこかに置いてきた“心の忘れ物”を
癒し救ってくれる、そんな作品。

印象に残った母の台詞
「私は、あなたの友になることは
 できない。
 でも…あなたが分かる」

エンドロールでは
温かく優しい涙に包まれた…
もう一度見たいと思わせる良作。
nori8

nori8