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メッセージのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

情報過多に思える構成に巧妙に隠されたトリック…初見では体感型SFとして楽しめて、2巡目ではヒューマンドラマと哲学的要素に思考の拡大を促される…これは得難い経験✨

まず初見…感情が上滑りするような冒頭からの異星人の到来。言語学者ルイーズの視点で進むストーリーは理解不能な存在とのコミュニケーションへとシフトする。彼らの使う表義文字や各国の対応に、冒頭のシーンは記憶の片隅で小さくなっていく。

ルイーズが異星人ヘプタポッドたちの言語を理解したところで、ようやく観る側は自分の立つ位置を認識し始める。

そこからの展開が秀逸でした。

非線形な時間…円環が繋がるクライマックス。ルイーズの体感した感覚が、スクリーンのこちら側と同期します。

そしてラストシーン。記憶の隅にあったはずの冒頭が…2つのワイングラスの意味が…フラッシュバックを起こす。

過去と現在と未来を同時に理解。
現実ではあり得ない現象の追体験。

円環描写のエフェクトを、そこに!?
簡単に思いつきそうで、無かったよね?
驚いてポカーンとしてしまった。

冒頭のシーン…そういうことなんだねって、ようやく作品そのものを理解する。

そこに至って、ヒューマンドラマのコアになる母と娘、そして父に意識が向く。

絶対に二度見して欲しい。
表層的に見えていた情報。そこに隠された理由や裏付けが随所に溢れていた。

娘の台詞の中でルイーズの夫が娘を見る目が変わった理由…もしくは娘が母へ放ったヘイト…夫との離婚の直接的な原因は、彼女の得た力が招いたというのが窺える。

ここでありがちなパラドックスの解消を行おうとすると、途端に下らないご都合主義に成り下がってしまったと思う。

それをせず、人の感情を落とし込む事で、この物語は単なるSFではない、メッセージ性のある傑作になったんだと思います。

そして表層的に見えていた異星人とのやり取りは『コミュニケーション』と『調和への挑戦』を表現していたのだとも…

ヘプタポッド。理解不能な存在。
防護服を脱いで接触を図ったルイーズと対照的に描かれていたのは世界各国の対応。
特に中国とそれに追随する諸国。
『歩み寄る姿』と『拒絶』

歩み寄る事には恐怖が伴う。
その恐怖に対する姿勢の対比。

例えば…街中で、英語じゃない言語を話す外国人に声を掛けられたら?相手が何を意図しているか解らない恐怖に、日本人は笑ってイエスと言うのかも。それも言語相対性仮説から来る、日本人の思考なのかもしれませんね。

交信断絶…歩み寄りとは程遠い行為。
それは疑心暗鬼を強め、自己防衛の為の攻撃性に繋がり、作中での『宇宙戦争』なんて言葉に繋がっていく。

人間対人間のコミュニケーションでも、それは同じことが言えると思います。

それを広義的に『不和』だとして…どのように『調和』すべきなのかを考える事が必要なんじゃないでしょうか。

ヘプタポッドが武器と言ったものも、必要なツールですよね。相手との意思疎通を図る方法。

答えのひとつとしての…非ゼロ和。
NON-ZERO-SUM…全員が勝者になれる関係性…奇しくもルイーズが口にしていた『win-win』や、ライアーゲームでカンザキナオが目指し続けた解決方法(謎)ヘプタポッドが3000年後の問題を解決する為に人類に接触した理由。調和への足掛かり。


歩み寄り、調和に満ちれば、互いが向上していく。それはきっと過渡期を迎えた人類にさらなる進化を促すものになる…やるのは『今』を生きる私達だ。


そんな愛に溢れたメッセージ。

長々と書いてしまいました…
それぐらい分厚くて、恐ろしく深い。
それとないシーンにも意味がある。
(; ̄ェ ̄)

要約すると…

ヴィルヌーヴ監督…マジで変態!((;゚Д゚))
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