emily

ぼくのエリ 200歳の少女のemilyのレビュー・感想・評価

ぼくのエリ 200歳の少女(2008年製作の映画)
4.7
ストックホルムの郊外に住む、いじめられっ子の12歳のオスカー。仕返ししたくてもなにもできずもやもやした日々を過ごしていた。ある日引っ越ししてきた少女エリと出会う。彼女は大体12歳だという。毎晩彼女と話しをして仲良くなっていく。そのころ街ではおぞましい殺人事件が数々おきていた。

弱肉強食の世の中を生き延びるため、オスカーと同じようにヴァンパイアのエリも自分の身を守り生きている。彼女はただその方法が人の血を吸うという手段しかないというだけのことだ。

その描写は子供のかわいさの反面、かなり動物的で残虐なものになっている。血の生臭さを感じさせる、血の触感が伝わってくるような冷たく冷酷な描写が、閉鎖的な雪景色に色濃く浮かび上がる。ヴァンパイアのはかなさや美しさより、もっと生々しくリアルな描写になっている。

そこに対比するようにあるの二人の恋の物語だ。動物的本能を抑えながら、大事な人を彼女の方法で守り抜く。それは残虐な方法ではあるが、その気持ちが非常に美しく、はかなげである。

対比する描写はさらにそのはかなくも永遠なものを感じさせる。またそれを立体的にするのが深みのある重さのある音楽。

人種を超える壮大な愛の物語、その奥にはさらに秘密も隠されていますが、何もヴァンパイアではなくともマイノリティを先入観で排除してしまう世の中に合致する物語ともとらえることができます。誰だって自分の身を守るため必死で生きている。それを認め、尊重することで救われる人も居る。
emily

emily