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リザとキツネと恋する死者たちのemilyのレビュー・感想・評価

3.7
1970年代のブダペスト、日本大使未亡人の看護人として住み込みで働くリザは、日本の恋愛小説と、自分にしか見えない幽霊の日本人歌手、トミー谷を愛していた。30歳の誕生日外出許可をもらい、ミックバーガーに行く。外出中、何者かによって未亡人が殺害される事件が発生そこから、奇妙な殺人事件が次々起こるのだ。彼女が少し恋心を抱いた相手は次々死んでいくのだ。これはキツネの呪い?刑事のゾルタンは下宿人を装ってリザと同居を開始するが、彼女には疑わしい点が一切ないのだ・・

70年代のレトロな色合いに、かわいいインテリア。不思議ちゃんキャラのリザは年齢にそぐわない三つ編みヘアーで、片言の日本語で小説を読む。幽霊のトミー谷も片言日本語で歌謡曲を歌う。テロテロの衣装や、狙ってるのか本気なのかわからない、若干ずれた日本文化の解釈が乗っかってくる。まさにハンガリージャポネスク的な全く違う文化が存在しているようだ。

設定も奇想天外なら、ストーリーの展開も先が読めないというより一貫性がなく、めちゃくちゃなのか計算なのか、狙ってるのか、バカなだけなのか?それでいてどんどんとその世界観にのめりこんで、気が付いたら振付け真似してたり、歌いだしてる自分がいるのだ。というより歌をもっと欲してる自分がいる。

緊張感のあるシーンで笑いを突っ込んで来たり、グロテスクなシーンがやたらポップに描かれていたり、かわいいんだけど、どこか”中途半端”な感じが逆に愛おしく思える。その微妙なズレを楽しみつつ、それでいてしっかりしたテーマもあるんです。本当に愛する人に出会うにはそれなりの努力が必要。目先の美に捕らわれて、本当に大事なものを見失わないようにしないといけない。当然妥協してこんなもんかなと、あきらめると、本当の愛には出会ない。

突っ込みどころ満載だけど、そこは気にせず飛び込んでくるものを受け止めて楽しみたい作品。
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