演劇を中心に活動している監督なだけに、場面設定のはっきりとした映画だと感じた。
はっきりとした場面設定はキャラクターを引き立てる。三浦友和、若葉竜也、新井浩文、南果歩が見事それに応えている。
三浦友和演じる父親のキャラクターがいい。
封建すぎる父を描くと、とかく常軌を逸した暴力に発展しがちだ。しかし、彼は容姿や動きの暴力性に反して、物理的な暴力をそれほど振るわない。振るいそうな場面でも最小限に抑える。
葛城家が狂った家庭として映るか。
日常と地続きの情景として映るか。
父の抑えた暴力性によって、
葛城家を、アトム化した日本の抱えた闇として映し出すことに成功している。
若葉竜也を見ていると、演技における「自然」とは何かについて考えさせられる。
自然にはふた通りの意味合いがあると思う。
・不自然の対義語としての自然
・人工の対義語としての自然
若葉竜也は両方の自然を、使い分ける絶妙な役者だと思う。
『街の上で』の主演も素晴らしかったが、これから日本を代表する役者になるのではないかとワクワクする。
一方で、キャストが素晴らしすぎるあまり、田中麗奈に少し見劣り感を覚えた。
アトムを担当する4人とは対照的に、社会を担当する役回りだったが、彼女の思い、感情、行動原理が汲み取りづらく感じた。
最後に、
これは二律背反の部分ではあるけど、演劇的な場面設定は分かりやすくもあり、余白のなさにも繋がる。
一つ一つが意味付与的なので、ぼくらが感じるスペースがあまりない。そこは、好き嫌いが分かれるところだと感じた。
