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胸騒ぎのシチリアのemilyのレビュー・感想・評価

胸騒ぎのシチリア(2015年製作の映画)
3.3
声帯を痛め声が出せなくなった世界的ロック歌手のマリアンヌは年下の彼氏ポールとともに静養のためにシチリア島で優雅な日々を過ごしている。そこに元恋人で音楽プロデューサーのハリーが娘を連れてやって来る。マリアンヌとポールの関係が揺るぎ悲劇を巻き起こす。

大規模な野外フェスから幕開け、シチリア島の燦々と降り注ぐ太陽の光と、白い建物、海と山に囲まれた絶妙なロケーションでセレブ達のバケーションを開放的ではなく閉鎖的に描写していく。そこにはそれぞれに抱える闇があり、眩い光と交差していく。4人が過ごす日々は徐々に男女の緊張感を帯び、不穏な目線が交差し始めると避暑地はさらに閉鎖的に緊迫していき、何かが起こりそうな雰囲気が糸を引っ張っていく。男女間の嫉妬、探り合い、見せ合い、言葉にならない緊迫感を音楽が中和していく。

そんな中でも風をまとい火に焼けた肌が白いドレスによく映えるマリアンヌ演じるティルダ・スウィントンの美しさは風になびき香りまで漂って来そうだ。ざっくり開いた背中、太陽に映える数々のドレスに魅せられる。

穏やかな日々は退屈で、胸騒ぎするような刺激を求めてしまうが、現実化されると平坦な日常がいかに幸せか痛感させられる。
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