Kevin

ロンドン・ロード ある殺人に関する証言のKevinのレビュー・感想・評価

2.9
イギリス、サフォーク州イプスウィッチの町で実際に起きた売春婦連続殺人事件。
その事件をミュージカルとした原作を映画化したのが本作である。

トム・ハーディが出てるなら観ねば!
ということでワクワク鑑賞に至った訳だがこれが如何せん面白味に欠ける。

嫌な予感はしていたが、やはりトムハは特別出演の枠。
出演時間はものの数分。彼目当てで観たら大いに肩透かしを喰らうかもしれない。
と言ってもあんなイケメンなタクシードライバーが歌う姿を見れただけで価値はあったのかもしれないが。
その後不意に終盤に再びチョロっと出てきても特に何もなし。
まあ、それは百歩譲って構わない。見れただけでも満足ということで。

しかし肝心の内容が上でも書いた通り特筆すべき点がない。
この手の事件をミュージカルに仕立てたという点は斬新な気もするが、そのミュージカルとしての力量が乏しすぎる。

ミュージカル部分は歌のようなモノではなく、台詞を多少リズミカルにした程度。
ダンスもないし、歌詞にあたる部分は同じことを繰り返し歌っているだけ。
これは“実際の証言に基づいた台詞だから”と言われてしまえばそれまでだが、ここまでノれないミュージカル映画は初めてだった。

ミュージカルにするならとことんミュージカルに。
くらいの勢いがなければ、“設定は斬新”という印象だけが宙を舞うだけ。

更に言うとサスペンスの部分も非常に弱い。
実話なのでこんなこと言いたくないが、映画にする事件としては少々インパクトが薄いのだろうか。
いや、そうではないかもしれない。
本作の事件の描き方が極めて下手くそなのだ。
面白くしようと思えばいくらでも出来るだろうに。

勿論、悲惨な出来事なことに変わりないが、観てるこちら側としては事件に対し何のスリルも感じない。

ただ“売春婦が5人殺害された”という事実だけが一人歩きするだけで、事件に直接関係する描写はなく、犯人に繋がる手掛かりや伏線を何一つ見せないまま気付けば犯人自らが出頭し、顔も明かされずに事件は終わりを迎える。
サスペンス的面白さなんてあったもんじゃない。

その上、終盤オリヴィア・コールマン演じる証言者の1人が“私は犯人に賛同する”などと抜かし始める。
今まで犯人に対し恐怖心,嫌悪感を抱いていたはずの彼女が、犯人が捕まったら捕まったで売春婦を殺したことに感謝している。
「結局人間自分のことしか考えてないんだな」と正直この発言には虚しくなった。
分からなくもないが思ったとしても口に出さないのが利口でしょう。

そんな彼女らが事件後、隣人たちと協力してロンドン・ロードを花で彩り、再び活気を取り戻そうとする姿を見ても、それこそ自分のための自己中心的な理由だろうと思えて感動も出来ず。

ドラマとしてもサスペンスとしてもミュージカルとしてもいまいち。

せめて1つだけでも良かった点を挙げるならば、カメラワークに関してはある程度頑張っていたと感じた。
Kevin

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