りりー

さざなみのりりーのレビュー・感想・評価

さざなみ(2015年製作の映画)
4.2
運命と呼ぶ他ない恋人たちを描く映画を観ると、いつも頭に浮かぶ問いがある。一生に一度、と思えるような恋があったとして、その恋に破れたならば、その後の人生をどうやって生きていけばいいのだろう?もうあの人以上の人には出会えない、と思いながらする恋が、”新たに”一生に一度の恋になることなど、はたしてあるのだろうか。恋しい人に忘れられない誰かがいると気づいたとき、一体何ができる?本作は、そんな問いに一つの回答を示す映画だった。悲しく切なく、何よりやるせない、運命じゃないと気づいてしまった恋人たちの映画。
45年連れ添った夫婦に届いた、思いがけない便り。それは、夫の遭難した昔の恋人の遺体が見つかったという報せだった。未練を残した昔の恋人への思いを断ち切れない夫。夫には自分と出会う前に結婚を考えた女性がいたことを知った妻。二人が共に過ごした月日は変わらずかけがえのないもので、迷わず運命と呼べる関係のはずなのに、ただ一人の女性の存在によって、その事実は心許ないものになっていく。夫の仕草が、言葉が、少しずつ知らないものに、知らない誰かになっていく。苦悩する妻を演じたシャーロット・ランプリングの演技が圧巻。
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