塚本

さざなみの塚本のレビュー・感想・評価

さざなみ(2015年製作の映画)
3.7
老夫婦が主役の映画って、昔から好きなんですよ。
古くは「黄昏」、最近では「愛・アムール」なんてところでしょうか…

夫婦を演じるのが思い入れのある役者なら尚更です。
彼らのキャリア、そして彼らが生き抜いた時代。
それらが老いた彼らの演技に二重、三重と、否が応でも被さるんですね。

シャーロット・ランプリングとトム・コートネイが結婚45周年を祝うパーティのBGMのリストの一番のメインディッシュに選ぶのが「煙が目にしみる」……??

…いや、そこはアンタ、「恐怖の頭脳改革」でしょうが!

いくら人の良さげな枯れた老人を演じても、騙されませんぞ。

45年という長いクロノスな”時間”は、互いに慈しみながら刻み込んでいった、彼らだけのかけがえのないカイロスな”時間”であった。
しかし、それを彩り、支えていた情愛という土台が、夫の過去にまつわる、ある出来事によって、その全てが虚構だったのではないか?…という疑念が妻の心に芽生え出します。

初めはほんの小さなシミだったのが、徐々に確信に変わっていきます。

70歳を過ぎた老女が、その疑念によって繊細な乙女のように……

って、アンタ、スインギング・ロンドンのアイコンやったやん?

イケイケやったやん?

…と、まぁ、実に感慨深い(どこがやねん)ドラマでした。
塚本

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