しの

パディントン 2のしののレビュー・感想・評価

パディントン 2(2017年製作の映画)
3.8
前作に足りなかった要素や不満点の多くが補完された。相変わらずフワフワした世界観だが、今回はパディントンがなぜ愛されるかと、そこから広がる隣人愛の輪をしっかり軸にした話だったため説得力が増している。親切や善意を信じる話として一貫しており、伏線回収の楽しさも数段上に。

とにかく自分が前作に抱いた不満が解消されているのに驚いた。そしてエンタメ的な楽しさもテーマの強固さもパワーアップしている。一作目がダメだったけど二作目は良かったというのも、我ながら珍しい映画体験だ。

まず、エンタメ的な楽しさについて。前作は家族の輪を形成する話だったため家の中での展開が多かったのに対し、本作は家から飛び出してより大きな輪を広げていく話なので、よりロンドンという舞台が活かされいて映像的に楽しい。また、絶え間なくポンポンと伏線回収をしてくるので、もはやそれ自体がエンタメ的な楽しさに繋がるという高級な部分もある。

次に、テーマの強固さについて。今回はテーマの一貫性と着地も素晴らしい。冒頭から隣人愛のテーマを前面に押し出し、続いて街に馴染み輪を広げていくパディントンの様子と続き、事件発生後も変わらぬ彼の親切心や礼儀正しさを見せてさらに輪を広げ、終盤にかけてはそうして広げた輪によって救われる話が展開される。非常にキレイな構成だ。

ただ、これだけは言っておきたい。やっぱり前作に引き続き「過剰なハッピーエンド」が目立った。とはいえ、今回はエンドロールにその成分が収まってたので前作よりはマシだった。あと、悪役に救いを与えるのはいいが、そこはちゃんとパディントンと交流させての救いにしないと軽くなってしまうと思う。この辺りはシリーズが苦手としいる部分かもしれない。

このシリーズには、絵本の映像化だからこそのフワフワ感がある。前作に引き続き、その世界観の楽しさを様々な演出で存分に味わわせつつも、本作はしっかりとしたテーマとストーリーラインで中身を固めることで、より「大人も子供も楽しめる」へと歩みを進めたのではないかと思う。これは、理想論の話なのだ。多少の無理は承知で、それでもその理想を信じているから、実写で語るのだ。
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