倉科博文

フッド:ザ・ビギニングの倉科博文のネタバレレビュー・内容・結末

フッド:ザ・ビギニング(2018年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

【総評】
俳優を見る映画かと思います。
ストーリーは単調だけれども、シナリオ自体はまともでしょうか。
ただ、設定や細部にアラが目立つのは否めない。
領地を没収したはずの主人公が、そんなにお金持ってて不思議だと思わないの? とか、敵の隊長クラスを監視無しで自国内に野放しにしてるの? とか。
でも、ド派手な、敵味方揃って何故か弓術全開の戦争シーンは、スピード感とハラハラ感もあって楽しめた。

【俳優】
タロン・エガートンが愛らしい。
ジェイミー・フォックスが格好いい。
イヴ・ヒューストンが美しい。
ベン・メンデルソーンが憎らしい。
マーリー・エイブラハムが怖い。
それぞれ、キャラ立ちしてて良かったのでは。
でも、誰一人として、人間的な厚み、ひだを持って描かれている人がいなかった。

イヴ・ヒューソンって、ボノの娘さんなのね。インド人系の美しさ。
そして、「アマデウス」でサリエリを演じたマーリー・エイブラハム。相変わらず、怖い。「アマデウス」では、モーツァルトを追い込む中での逡巡や迷いながらもやり切る怖さがあったけど、今作では、枢機卿という聖職なのに、ただただ残忍で怖い。

本作では、これくらいがこの作品を語る上で適切で、以下は蛇足かなとは思いつつも、自分なりのフォーマットに沿って書いてみます。

【構造】
社会に対するメタファーとしての機能は弱かった。完全なる勧善懲悪もので、ヒーローアクション以上でも以下でもない。
別の言い方をすると、登場人物の内面に深みや複雑さが一切ない。

また、主人公であるロビン(タロン・エガートン)の内面の成長も感じられない。
終始、復讐とマリアンへの愛が主題で、州長官(ベン・メンデルソーン)との闘いも、口では何やかや言いつつも、民衆のためという大義が置いてきぼりになっている感が否めない。
これは、マリアンとの復縁シーンと内乱終結のために自分の身を捧げるシーンの順番を入れ替えればイメージが変わったのではないだろうか。
あと、アクションシーンを除いたクライマックスシーンであるロビンの民衆に対する演説シーンももう少しドラマチックに描いてくれると良かった。最大の見せ場が、イマイチ盛り上がりきれなかったように思う。

映画作品としては、弓を主力とした戦闘シーンがスピード感溢れ、迫力があって良かった。
特に包囲されて集中射撃で追い込まれるシーンは臨場感もあり、映画館ならではの興奮が味わえる。
そして、ジェイミー・フォックスによる修行のシーンでは、「スピード!スピード!スピード!」と追い立てられる様が、ビジネス啓蒙セミナーのようで笑ってしまった。
あと、枢機卿を迎える宴のシーンでは、教会内の猥雑さや煌びやかさの描写がいやらしく、民衆が暮らす一般社会の薄汚さとの対比から、「マトリックス」でメロビンジアンが潜む地下クラブのシーンを想起させられた。

【構成】
ログライン(筋書き)としては、食うに困らない心優しきボンボン(ロビン)が、敵の悪事に気付き、愛と民衆のために立ち上がるという筋書きで、悪くないはず。
転換点も、①ロビンの領地没収とジョンとの出会い、②枢機卿の登場と民衆の蜂起、と良いバランスで配置されているのでは、と感じた。
ただ、物語の最後の推進力として、4日以内というタイムリミットが設定されるわけだが、それがあまりにも仕掛け的に意味を成していないので、メリハリを感じれなかった。