ゼロ

リップヴァンウィンクルの花嫁のゼロのレビュー・感想・評価

4.0
この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ。

「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 」や「リリイ・シュシュのすべて 」でお馴染みの岩井俊二監督作品。透明感のある物語やネットの闇を描いた物語など陰と陽を描くの上手い監督ですが、本作品はその陰と陽が見事に描かれていました。

導入部としては、派遣教師の皆川七海(黒木華さん)は、ある日、SNSで出会った鶴岡鉄也と結婚した。仕事を続けていく意志はあったが、更新はできず、寿退社という体で退職。結婚式をするにあたり、友人のいない七海は「なんでも屋」の安室行舛(綾野剛さん)に代理出席を頼む。これから結婚生活が始まるとかと思いきや、鉄也の浮気を見つけ、紆余曲折あり、七海が浮気していることになり、離婚。家を出ていくことになったが、仕事のない七海は途方に暮れているのだった。

主演の黒木華さんの騙されそうな存在感が良かったです。悪い人ではないのですが、安室に出会ってから人生が転落しているわけですが、本人は真実を知らないのでふわふわと生きています。安室を演じる綾野剛さんも胡散臭い役をやらせると輝いています。人間としてクズな部分もありますが、そういう人は世の中にたくさんいます。

また里中 真白役を演じたCoccoさんが良かった。彼女は女優が本職ではなく、アーティストなわけですが役柄にぴったりでした。全てを金で買い、幸せが分からなくなってしまい、最後の展開も妙に納得をしてしまいます。

3時間にも及ぶ大作ではありますが、人生は山あり谷ありであり、現代社会を描くことを考えたら、仕方がない時間なのかなと思いました。伴奏にクラッシックも使われており、どこか幻想的な雰囲気もありました。

この世界に、何が真実で、何が幸せか分からないけど。なんとかやっていくもんなのさ。純文学を感じさせるような心地よく、胸糞が悪い作品でした。
ゼロ

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