ねーね

裸足の季節のねーねのレビュー・感想・評価

裸足の季節(2015年製作の映画)
4.5
儚く溶けるイスタンブールの朝焼けに、希望と絶望の涙がこぼれた。
素晴らしい。個人的今年ベストかもしれません。

自由をもとめることすら許されない
抑圧された社会に生きる、5人姉妹。
そのしなやかな肌は、すべてをはじき返すほどに瑞々しく。
自分らしく生きたいと叫ぶ彼女たちの、強いようで脆く危うい生き様は胸が詰まるほどに美しいが、
彼女たちを閉塞的なトルコ社会に縛り付ける大人たちの支配の中で、その溢れんばかりの輝きは次第に力をなくしてゆく…

原題の mustang は、野生の馬を意味する。
監督インタビューによれば、はつらつとして扱いにくい5人姉妹を象徴しているとのこと。
彼女たちの長い髪はたてがみのようだし、物語を駆け抜けるそのエネルギーこそが、この映画を作り出している。

トルコはヨーロッパでも比較的開けた国だという印象をもっていたけれど、ここまで女性の尊厳が軽視される悪しき慣習がまだ深く根付いているなんて…
純潔であることを全てとする祖母たちの考え方には、恐怖すら感じた。
それに必死に抗おうとする姉妹たちは、さながら蟻地獄にとらわれているかのようで。
そんな現実から逃れようと、時おり子犬のように戯れ弾けるように笑いあう5人の天真爛漫な姿が、この重苦しさからこちらの心をフワッと解放してくれる役目を担っていたように思う。

押し付けられる『幸せ』のなかで生きるのか
自らの意思で『幸せ』を掴み取るのか
同じ『幸せ』でもそこには計り知れないほどの違いがある。

大人になると同時に、初対面の男性のもとへ嫁がされていく姉たちの人生
それをただ見つめていた末っ子のラーレが、その力強い瞳で前を見据え駆け出す姿には、誰もが心揺さぶられたのではないだろうか。
靴下を履いて裸足の季節を脱ぎ捨てた彼女たちに、明るい未来が残されていることを願って。
ねーね

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