やっぱりグリフィスは巧いんだなあ。当時の映画の撮り方として、人物は画面(舞台)の左右(上手または下手)からフルショットまたはロングショットで登場することがほとんどだと思うのだけど、本作で王妃は画面右手前から登場する。なので顔が見えず背中から登場することになるが、それによって書割り的・平面的だった画面に突如奥行きが生まれる。この背中を見せる遠近というのは、のちに会話シーンなどで多用される肩越しショットなんかにつながったのではと勝手に想像。
また王が王妃と楽士の関係を疑うシーン(このときの楽士のごまかし方がちょっとおもろい)で、主役となる彼らの後ろに賓客がわらわらーっと大勢入ってきてそれぞれ中央とは関係ない動きをしている。前方ではごまかしてる楽士があさっての方を向いてギター弾いてて、王と王妃もまた別の動きをしていて、狭い画面の中でさまざまなアクションが入り乱れるなか王妃の不安と王の疑念が膨らんでいく、てのがすごいなと思った。あとはやっぱり出入口を煉瓦で埋め込むときのカットバック。
エドガー・アラン・ポーが原作。王のメイクがKISSのジーン・シモンズかロッキーホラーショウのティム・カリーみたいだった。