円柱野郎

何者の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

何者(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

モラトリアムが終わる。
学生という身分から社会人へと変わっていく中で行われる、一体自分とは何かという自問自答。
自分は非凡なのか平凡なのかはともかく、他社に認められたいという自己顕示欲的な感情の発露が、登場人物たちそれぞれの姿で表現されていて見応えのある青春ドラマだった。
まあ、「青春」といっても爽やかでもなんでもないけどねw
むしろ主人公の観点では、嫉妬や妬みの様な…ドロッとした沼のような感情に支配されている感じだなあと思って観ていたな。
あと、「実は大学5年生でした」というちょっとしたミスディレクションにはまんまとハマってしまいました。
「帰国」とか「留学」とかキーワードが出ていたのにスルーしてた…やられた。

就職活動の1分間自己アピールと、Twitterの140文字での表現が似たようなものだという提示は興味深い。
最初は「その制限の中で如何に自分を表現するのか」という意識の高いテーマなのかと思っていたら、作品としては逆説的に「それだけの情報で他人に一体何が分かるというのか」という話だったわけだけども。
そういう就活ネタやSNSといったガジェットを上手く使った提起が構造として面白いと思う。

事あるごとに挿入される劇中劇の舞台の場面。
主人公・拓人が仲たがいした昔の友人・銀次が立ち上げたの劇団の劇という事で、これもまた自己表現や自己実現という分かりやすい例えとして表現されている部分。
そこを否定しまくっていた主人公もまた、Twitterの裏アカウントという自分の舞台で演じ続けていた者なのだという皮肉のこもったクライマックスには、なるほどと感心した次第。
(これまでの場面をほんとに舞台セットにして見せる演出は、映画ならではの表現で上手いね。)
彼にとっての銀次とは同族嫌悪の対象だ…と言えば単純化しすぎかもしれないけど、つまりはそういうことなんだろう。
その銀次の行動こそが、自分がなれない自分というか、どこかで拓人が憧れていたものだったのだろうか。

ラストに銀次の劇を観た拓人は何を思ったのか。
劇中で彼は語らないが、彼の何かが変化したことを感じさせるエンディングで良かった。
円柱野郎

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