るる

神様メールのるるのネタバレレビュー・内容・結末

神様メール(2015年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

最初から最後まで画面が語る以上の情報量を受け取ってしまった感じ、

映画としては全然好みじゃないんだけど、見てみたかったものが詰まってたというか…

キリスト教、というか、聖書を真っ向から作り変える!! そう、これが見たかった!!

でも旧約聖書批判がドギツすぎて、そこはちょっと…特に、最後に神様をウズベキスタンに強制送還しちゃうのって、暴虐の神はイスラム教の地へ、って、いまの世界情勢を皮肉ってる??

ユダヤ教的にも相当まずいのでは??

いやシュールな映画なので、好みではないんだけど…

すごいよね。アメリカじゃ、まず作れない映画でしょ、これ。ブラックすぎる。

神様には実は娘もいた。父なる神によって、ママ=女神は沈黙を強いられている、娘は鞭打たれてる、

そうなんだよな、キリスト教というか、聖書というか、聖書を元にした宗教って、どうしようもなく男性原理。

「あいつはもう戻らない」
「俺の右側に座るな」

家出した兄・キリストが父なる神によってユダ扱いされてる〜! 何気ない台詞でサラッと示される、おもしろ〜!

それにしても、お兄ちゃんが味方なのはめちゃくちゃ心強いな!?

「人類に死を思わせる(メメント・モリさせる)なんてすごいよ」

褒めてくれるのかよ、キリスト、さすが、優しいな!?

そうか、人々が余命を知ったら、人々が神様の目を気にして、神様からの罰を気にして行動することはなくなるんだ…神様の支配が及ばなくなってしまうんだ、なるほどね!?

兄であるキリストは、使徒を12人しか集められなかった。ほんとは18人集めたかった。あと6人集めたら、きっとママが何かをしてくれる。パパは6+6人でやるホッケーが好きだけど、ママは9+9人でやる野球が好きだから。

女神が世界を再起動する認証番号、18。

これ、どういう意味かな、キリスト教で18ってどんな意味があったっけ、って思ったんですけど、6+6+6で悪魔の数字ってことだよね!? なんという気の利いた…皮肉! なるほどね!!

死が近付いた人々は母なる海へと向かう、ラ・メールは女性名詞、女神のいる場所。

これよくできてる、よくできてるよ、すごい! 情報を出す順番がうまい!!

文盲(あえてこの言い方をするね)の彼は蛇に似ていて、神様の娘は、こんな父が欲しかったという。

アダムとイブをそそのかした蛇!

彼に関するあれこれが暖かくて!!監獄にいたことのある彼は空の下でしか眠れない、そんな彼に、新・新約聖書を書いてもらいたい、預言者になってほしいと考えた、神様の娘エア…

識字障害があるから書けないと渋っていた彼、スペルはなんだっけ?と尋ねながら、彼が記した新・新約聖書は、女神が再起動した世界でベストセラーに。

その内容は彼なりの言葉、拙い絵によって綴られていた、ああもう、なんて素敵なんだろう!

女の子になりたかった男の子は6+6人でやるホッケーに参加できず、見学しているしかなかった。

でも神様の娘エアと出会って、両親の元から逃げ出して、彼女と七日間一緒に過ごして、世界は変わった。なんというボーイミーツガール…創世記…

童貞で性癖こじらせてた男は、余命を知って娼婦と関係を持ち、自信をつけることで、運命のひとと再会できた。愛を得た。無理してまで貞節を尊ばなくていい!という皮肉かしら。

自分に興味のない枯れた夫を捨てて、若く美しい男娼にお金を盗まれて、なんと、筋骨隆々逞しいゴリラを伴侶に選んだマダム…きっと、子供が欲しかったんだね…?

相手がゴリラなのは、進化論を認めない人達への皮肉だよね? 男より猿のほうがマシってか〜? ブラックユーモアにしてもすごすぎない…?

男を惑わせ、アバズレだと陰口叩かれてた薄幸の美女、撃たれても平気、その奇跡の正体は義手。自分のことを殺し屋だと思いこんでる変な男と一緒になったけど、殺しはやめさせた、

そして女神が作った世界なら、妊娠は男がするし、男にすね毛を剃ったら?と言える…生きやすくなったみたいで良かったね…?
男のほうは戸惑ってたみたいだけど、奪った小さな命のぶん、命を産み出すのかもね…?

そして、鳥を追って旅したジャン・クロード(ヴァンダムだよね!?ベルギー出身だからなの??)は、エスキモーと出会い、地球温暖化でも解けない氷の上で快適に過ごす…

なんかもう凄い結末だったな??

キリスト教っていうか、聖書を巡る宗教への皮肉たっぷり、
究極のフェミニズム映画っていうか…
いわゆる男らしくない男たちを、きちんと救済してるあたり、ちゃんと、現代のフェミニズム映画になってたよね…

そして、単純に、暴力的な父に復讐するために家出した娘が、ちょっとだけ母のために頑張ってみた、それだけの映画にもなってる。

「俺よりママが大事か!?」

パパも辛いね、うん、ちょっとだけ同情する…

水の上を歩ける神様の娘、下界に降りると奇跡を起こせない神様、

自分が退屈しのぎに作ったルールにことごとく絡め取られてしまう神様、まさしく堕天というか…

しかし、旧約聖書の神様が、教会で、隣人を愛せと説いた新約聖書のキリストを「息子はバカだ、アイツのしたことといえば、磔になっただけさ」と嘲り、

お前の人生をそんなふうにしたのは俺さ、と迷える子羊に告げる姿、悪魔というか冥界のサタンにしか見えなかった、強烈!!

そういえば、余命に余裕があるからってスカイダイビングした彼はどうなったんだろう? 死ななかったにしても、病院で植物状態になる可能性だってあったよね…

「ママの子供の頃を覚えてる?」
「あなたも年をとるの?」
「ママは年をとるの?」

この神様の娘エアの問いかけがね…そうなのよね…

聖母マリアだって最初から母だったわけじゃないし、乙女は年老いる、そしてそれは悪いことではない、当たり前のことのはず…

生まれて10年の神様の娘もまた、年老いるんだろうな、成長する、大人になる、恋をする、きっとセックスだってする、子供だってつくる…新・新約聖書には今まで明記されてこなかった愛にあふれてたと思う…

あ、そうか、エアが下界に降りる時、出エジプト記という題が出たのは、ユダヤ人を導いたモーセだけじゃなく、呪術を扱う女、魔女についても想起させるためか…

印刷技術の発明が聖書を広め、出エジプト記の一部の意図的な誤訳が、魔女狩りに繋がったというけれど、新・新約聖書では、ネットの発達、メールが世界を変えたんだな…?

ベルギー、ブリュッセルってそうだよ、魔女狩りで有名だった…

いやなんとも…ダメだ、誰かー! みっちり解説してくれ〜!!

決して、こうすれば世界は良くなる!という話じゃないのが良かった。ママが創る世界、けっこう、いや、かなり不安だし。

でも、こういう世界も楽しそうだな、これから、どんな世界が創られていくのかな、と思える結末になってて、そこが良かったな…

そして、神様はウズベキスタンで一方通行のドラム式洗濯機を製造しながら、家に帰りたがってる…なんで洗濯機なの…? いつか執念で家に帰るかもしれないね…

おもしろいっていうか…いろいろ興味深かったです、はい…ガールズムービー!といった感じの主題歌も良かった。
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