まちだ

海よりもまだ深くのまちだのネタバレレビュー・内容・結末

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

個人的に「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で、はからずも運ばれてくるトマトソースのハンバーグのくだりを褒めてて、信頼できると思った是枝監督。笑

期待通り良い作品でした。

凍らせたカルピスに残った冷蔵庫の匂い。経験ないけどあるよなあと笑
そういう細かいディテールの積み重ねで、リアリティがしっかり構築されていて、物語が自然に自分自身の経験に降りてきて、時には少し胸が痛んだり、ときにあたたかな気持ちにさせられる。

あとやっぱり、是枝監督の”会話”の、見せ方、演出が好きだとも思った。


物語はというと、

阿部寛演じる良多は、大昔に獲った文学賞にすがりついている自称作家の探偵。妻に逃げられ、今は息子の真悟との面会を生き甲斐にしている。


探偵事務所の所長に隠れて金を巻き上げるためにゆすった高校生からの「あんたみたいな大人にだけは成りたくない」という捨台詞に「そんなに簡単になりたい大人になれると思ったら大間違いだぞ!」と話す良多。

この映画は”なりたかった大人になれなかった者たち”の物語だ。



実家の近所にある公園の遊具は、”子供が転落する事故”によって使用禁止になっている。
いうまでもなくこの映画のテーマを象徴しているこの公園の遊具で、嵐の夜、良多と元妻の響子、真悟は忘れられない時間を過ごす。
嵐の中「飛ばされた宝くじ」を拾い集める3人に胸が熱くなる。不確かな、かすかな希望を拾い集めるみたいに。


そして真悟の「パパは何になりたかったの?なりたかったものになれた?」という言葉が、見ている私たちにも突き刺さる。
大人なら少なからず誰しも経験する感情が、この映画の根底にある。


雨に濡れても人生は続く。
明確な希望があるエンディングではないけど、嵐が去ったあとの街はどこか晴れやかだった。
まちだ

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