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ある戦争のryodanのレビュー・感想・評価

ある戦争(2015年製作の映画)
5.0
こういう戦争映画は初めて。戦争の悲惨さとか英雄モノはありがちだし、実際監督次第では見てしまう。おおかた「戦争映画=理不尽さ」がテーマだったりするよね。でも今作のアプローチは全く違いました。これは責任の所在と秩序がテーマであると思います。現代の戦争は数々の戦闘行為の失敗をひたすら改善し更新している。戦闘行為の一切を言わばマニュアル化することで効率良く的確に攻撃することを最大目標とする。作中のデンマーク軍のタリバンとの戦闘行為の一部始終を見ているとよく分かります。細分化されたケースバイケースをマニュアルで動く。そうすることで戦闘行為にムラが出来ない。自分達の社会に置き換えれば、作業と言っても差し支えないと思う。ただし決定的な違いは、人の生命を左右する判断をしなければいけないということでしょう。一つの判断が次の命令に、次の命令が次の判断に、そうやって秩序だっていく。秩序だった意思決定は個々の責任の所在が重要になる。間違えればどこの段階の判断が間違ったのか、芋づる式に聞けば分かるという具合に。後半の裁判劇の前にこの隊長、判断を誤っているんですよね。現地の家族を自分の基地から追い出して一家は惨殺されてしまった。軍のマニュアルではそれは正しかったのかも知れない。でもそれは本当に正しかったのか?そして核心の戦闘行為。軍のマニュアルでは間違っていた・・・でも果たして間違っていたのか?いずれにせよどっちに転んでも人が死ぬのが避けられないのが戦争。後は当事者の良心の呵責に委ねられ苦しめられる。結局、戦争は理不尽だ。
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