Masato

ダンケルクのMasatoのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.6
全く新しい戦争映画

IMAX試写にて

まず、この映画を観たいと思った方は絶対にIMAXで観ましょう。

ここまでIMAXを勧める理由は、この映画はアトラクション映画だからだ。
陸、空、海の3つの舞台からダンケルクの撤退作戦を淡々と映像化していく。主人公はいない。ドラマティックに描かれない。
だから、「インターステラー」のような情緒溢れる映画ではなく、ただ映像の凄さと沢山の命を救った作戦が存在したという事実を知る映画になっている。監督が同じだから、過去作と同じ姿勢で観てしまうと少し物足りなく感じるかもしれない。

今まで見てきた戦争映画とは一味違う。追手のドイツ軍から逃げる兵士、兵士たちを助ける人たちの姿をこの映画はやや主観的に追っている。
普通は人の命を奪っていくのが戦争だが、これは人の命を助けていく戦争だ。だから、せめて攻撃するのは空の戦闘機だけ。
こちらが非常に劣勢なために、追い詰められていくスリル感も同時に味わえる。
戦争映画の新たな切り口を体験した。

ちょっと似ているなと思ったのは「ハクソーリッジ」。
あの映画も、人々が殺しあう中で必死に命を助ける主人公を英雄的に映した映画だった。(が、メルギブソンなので、血みどろ四肢欠損パラダイスの映画でしたが)

第二次世界大戦の中に、こんな撤退作戦があったということを知れただけでもこの映画は意義のあることだと思う。
そして、死が簡単にやってくる中で生きる希望を見捨てない。決して生き抜いたことを悔やんではいけない。戦争中は玉砕だった日本は、特にこの映画を見て人間の命の大切さを思い知らされます。(日本でもキスカ作戦という撤退作戦があったそうです)

映像に関しては、前述の通りIMAX必須。
監督が「体感してください」というように、映画の中と鑑賞者が一体となるシーンが多いです。それ故、その場にいるような大爆音とその世界が目の前にあるような画質で堪能していただきたい。
撮影監督はインターステラーに続いてホイテ・ヴァン・ホイテマ。
インターステラーの宇宙船と同じカメラワークの時もあったが、空戦はどうやって撮っているのか見てみたい。そして、なによりも海の風景が素晴らしく綺麗。

見た後は「凄いもん見てしまったな」と感じると思います。
是非新しい映像体験を。

ノミネートされそうな賞
監督賞
脚本賞 (3つの異なる舞台と時間を絶妙に取り扱った脚本)
美術賞 (ノーCGで作られた舞台セット、墜落シーン用の飛行機など)
撮影賞 (ホイテヴァンホイテマによる空撮や海中の撮影)
録音賞 (爆撃音や銃声の録音)
作曲賞 (ハンスジマーによる時計針の音を取り入れたBGM)
編集賞 (3つの異なる舞台と時間を絶妙に取り扱った全編に渡る編集)
音響編集賞 (爆撃音や銃声の音響編集)
視覚効果賞 (ノーCG)

9つくらいノミネートされるかなと無知なりに予想。

追記2018.05.14
時間軸の違う3つの視点を同じ舞台で追う。特殊なグランドホテル方式の映画。やっぱり噛めば噛むほど味が出てくるスルメだ。
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