シャトニーニ

映画 聲の形のシャトニーニのレビュー・感想・評価

映画 聲の形(2016年製作の映画)
4.3
「君の名は」が新海作品にしては爽快すぎたんで、秒速以来の視聴後のあの気分を期待して見た。

わざわざ二駅先まで観に行って、これで感動しなかったら損だなと思いきや、最後まで観れてしまった。パンフも買った。

硝子と石田の、いじめの被害者と加害者、そして加害者もまた被害者となる関係は、聖書でいう「迫害をしていたが最終的に庇護者となり処刑されたサウロ」のようであるし、いち高校生が贖罪をするという話も日本の作品と少しかけ離れているようだった、だから個人的には古い大河小説のようで好きなストーリー感だ。

入野自由による石田の素朴にも影を落とした聲。長束の、植野の、ユヅルの聲。硝子役のふりしぼるような聲、どれもが主役である。同時に、硝子の手話までも、作品の中で聲として聞こえてくる。
魔法である。

京都アニメーションは作画が美麗で有名で、時折挟まれる視覚表現も見事だった。今作は劇場アニメとしてプロモーションの差で大きく水をあけた君の名はに次ぐヒットをしていたのだから、実質2016ベストアニメといっていい。

鑑賞後の余韻はすさまじく、aikoの主題曲をダウンロードして聴きながら、気づけば家まで二駅を徒歩で帰っていた。木々が、空が、人の営みすべてが、やさしく見えた。ひょっとして、この映画に恋をしたのは.....

2018/8/24追記

Eテレで再視聴。
コミックスも全巻買って見直せばまた違う解釈ができた
構成上手いな、山田尚子監督

石田はあのとき勇気をもって謝ろうとしていたし、川井や真柴の違う一面が見れた。それも人間だから清濁併せ持つもので、だからこそ硝子の前時代に取り残されたようなピュアさが際立ってしまう。こんな子いないよ、天使すぎる。バランスとるため家ではスウェット着てポテチ食べててほしい。もっと肌とか汚くていいんやって。

世間では感動ポルノと酷い酷評もあるが、そんなことを言う人はいじめの被害者や加害者、障害や孤独と遠ざかって生きれた幸福な傍観者なのではと思った。お前らはヤーショーとビッグフレンドにはなれないぜ

よくこち亀の「更生したヤンキーより、ずっと真面目だった奴のほうが立派」というのがあるが、
「観衆は転落劇や悲劇が好きだが、そこから這い上がる話はもっと好きだ」といのもある。
デヴィッド・ボウイだっけ?

人生のパズルピースが満たされた者には見えてこない、未完成なピースがちりばめられた物語なのだから。
自分を許せない大人、傷ついた子供、子に愛が届かない親、友人を失った若者、そして今恋をしている貴方、すべての人に、この聲が、届いてほしいものだ。