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映画 聲の形のRのネタバレレビュー・内容・結末

映画 聲の形(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

自宅で友人1人と。

2016年公開の漫画の実写化作品。

監督は「たまこラブストーリー」の山田尚子。

話は小学生時代に虐めていた転校生で聴覚障害を持つ少女、西宮硝子と偶然再会した高校生、石田将也は小学生時代に伝えられなかった想いを伝えるため硝子の元を訪れるというもの。

原作漫画は前の職場の先輩に激プッシュされて、気になって読んだら、止まらなくなって全巻購入してしまった(全7巻なので、集めやすいこともあり)。

そして、まぁ、なりそーだなーと思っていたところ、アニメ映画化。まぁ、妥当だろう。

だから、是非劇場で観たかったというのはあったんだけど、残念ながらタイミングが合わず、此度DVDで鑑賞しました。

結論から言えば、一作品としては良く出来てる!!けど、原作ファンとしては…。

まず、良いところから。

制作が「けいおん!」や「たまこマーケット」で勢いのある「京都アニメーション」というだけあって、やはり作画と美術が恐ろしくきめ細かい。

特に中盤のお葬式でのあのバックの華やかさ?「お葬式」という儀式の独特の雰囲気と相待って、すごく神秘的だった。

というか、全体的なパステルカラー?な色彩が原作の持つ「みずみずしさ」と相性抜群でキャラの作画と合わせて、視覚的な満足度は、もうこれ以上不満のないくらいの完成度だった。

声優陣も、演技派からフレッシュな若手まできちんと揃えているだけあって、ぴったり(唯一、不満ではないけど永束君の声が小野賢章でイケメン過ぎた。もうちょい三枚目が良かったなぁ。)。

こういう青春ものなら「打ち上げ花火〜」じゃないけど、有名人起用もありっちゃ、ありだったけど、下手な吹き替えなら目も当てられないからこれで全然オーケー!!

唯一、起用された松岡茉優(「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z ボルケニオンと機巧のマギアナ」)も主人公、将也の小学生時代を生意気たっぷりに子憎たらしく演じていて、個人的には良かった。

その他、音楽もカメラワークも何もかも、高評価も納得の出来だということはわかる。

じゃあ、何が不満かというか、やはり編集点だろう。

先ほど、原作が全7巻ということを述べたが、今作を観て感じたのは、必ずしも原作が短めであっても、映画化しやすいわけではないものもあるということ。

もう一度書きますが、すごくダメだったというわけではないんです。ただ、個人的に、小学生時代の出来事がきっかけで友達も地位も全て失った将也が硝子との再会、また古くからの友達、新しい仲間との出会いをきっかけに少しずつ他者と生きる意味を見つめ直す点に、この作品全体に感じる「かけがえのない高揚感」を感じていた自分にとってはやはり、一人一人の描きこみが薄く感じてしまった。

それは作品全体のクオリティの高さから言っても、その原因はやはり時間との兼ね合いの一点に尽きるだろう。

やはり、原作が短い巻数の中ではあれだけ密度の濃い人間関係を描いていたことと比較すると個人的にはちょっと残念に感じてしまった。

そして、その中でも一番残念だったのが、ラストの展開。いや、わかるよ、話のクライマックス、感動的なシーンを入れたかったというのは。けど、他の話では許されても今作のあの「ラスト」を知っている身としては、あまりにも「ウェット」過ぎると思う。

先に述べたキャラクターと話の描きこみ不足から、このクライマックスへ至る流れになっても、着地と感動の到達度としては不釣り合いだろう。

原作のラストは全ての終着点が「同窓会」で終わるってことに意味があると思う。

青春の期限は短い。

いじめられた側もいじめた側も進みゆく時間の流れは同じ。

だからこそ、幼少時に決して相容れなかった2人が再会を経て、様々な人との出会いを通して成長し、大人になった姿で揃って「あの頃」に戻るラストが忘れられない自分にとっては原作のラストこそ相応しいとやはり思ってしまった。

ただし、これは完全に好き嫌いの話。劇場用のラストはラストで感動的とも言えるし、2人の「これから」に希望が溢れているのも同じ。

そういう意味ではこれはこれでアリなのかもしれない。

けど…うーん、答えは出ないなぁ。
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