岡田拓朗

ぼくは明日、昨日のきみとデートするの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

3.9
ぼくは明日、昨日のきみとデートする

たった30日
恋するためにぼくたちは出会った

小松菜奈見たさに鑑賞。
とてつもなく愛おしい2人なのに、とてつもなく切なくなって、物語が進むにつれて、物凄く胸が締めつけられる。

設定は非現実的だけど、その設定から表現されているものは分解していくと、この設定ではないと伝えられないことが多く、恋愛の密度がとても濃密なものに仕上がっている。
だからこそより愛おしいし、感情移入したくなるし、それが総じて感動に繋がる。

南山高寿(福士蒼汰)は電車の中で偶然ある女性に一目惚れする。
まさに運命的出会いを果たし、奥手であったが勇気を持って話しかけ、少し話してまた明日と別れる。
その相手の名前が福寿愛美(小松菜奈)。

連絡先を聞きそびれて一世一代のチャンスを逃したと悔いる南山。
でも本当にその翌日に2人はまた会うことになる。
無事付き合うことになった2人。

幸せすぎる時間を過ごしている中、南山はあることが気になっており、それが一つのメモ帳を読むことでさらに気になり、電話で愛美から真意が伝えられる。

そこから今作のタイトルの意味がわかり、幸福感溢れていた2人のムードに愛しさだけでなく切なさのエッセンスが加わっていく。
でもここが最高潮ではなく、ここが始まりなのである。

未来と過去、時間軸が違う空間にお互いがいる今に、一緒に過ごしていても拭えない違和感と相手を思うからこそ無駄に多くのことを考えてしまい、近づくに近づききれない高寿と愛美。
温度感の違いが顕著になっていくシーンは見るに耐えない。

そんな中、高寿が2人の関係を作る中で、大切なことを理解して、それぞれが今を大事にして残り限られた日数を過ごしていく。
大切なのは過去でも未来でもなく、今一緒に過ごすその瞬間であり、忘れない日々を思い出として作っていくこと。
今を大事にして生きることが何よりも大切で、それこそが一番の思い出となって残っていく。

忘れられるとかなかったことになるとか、そんなことは関係なくて、今を2人で思う存分楽しんで生きることが全てであることを悟ってからの2人がより愛おしくて、だからこそ離れて欲しくないと切に願ってしまう。

中盤から終盤にかけて、愛美が全ての行動を高寿が楽しめるように設計していたという事実を、巻き戻し的に全て伏線にして回収していく展開が物凄く美しい。

自分の幸せを誰かの次に考えられてそれが全ての行動に落とし込まれていくシーンの連続が、本当に愛おしくて、でもだからこそ切なくて泣けた。
しかもそれが小松菜奈演じる愛美だからこそまた、よりよいのである。

自分にとって最初の日が相手にとっての最後の日。
高寿にとっての最後の日は余すことなく最後の時間を過ごせたが、愛美にとって最後の日は知らないフリをしないといけないとても切ないもので…そんな愛美が高寿に行う全ての優しいフリや嘘や行動が、本当は愛美の意思とは反した行動であることを悟ったときに涙が止まらなくなる。

それを高寿が受け止めたからこそターニングポイントでちゃんと2人が出会うんだなーと、言葉に表せない全体がとても綺麗な物語だった。

切ないけどハッピーエンド。
時間軸を歪めることで、こんなにも感動の連鎖を生める作品ができるなんて!
多幸感に溢れ、総じて満足感のある余韻に浸れた作品だった。

P.S.
京都の鴨川や伏見稲荷大社、三条大橋といった観光名所と京都そのものの雰囲気がよりこの作品の世界観を素敵なものに創り上げていた。
純粋でちょっとわがままで、でも優しすぎる透明性を帯びた小松菜奈の破壊力が物凄かった。
この作品から入ると小松菜奈のイメージが全然変わる。
役者って人間不信になるくらい改めて凄い!
京都はふらっと行ける距離感やし、これはロケ地巡り確定案件。
岡田拓朗

岡田拓朗