ダワーニャミーンビャンバドルジ

ヨーロッパ横断特急のダワーニャミーンビャンバドルジのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ横断特急(1966年製作の映画)
4.6
2度鑑賞。特集「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」の6作品の内の1本。1周目は途中寝ちゃったけど、しっかり起きて全編見てみるとめちゃくちゃ面白い。

言葉遊び。コカイン密売組織?のボスであるフランクから次の接触の説明を受けた後に「最終確認だ。場所は?」って質問にエリアスが「"場所"!」ってそのまま答える所で笑った。あと、自分の名前を騙る時といい作り話を聞かせる時といい、何かと「ジャン」というファーストネームを使いがちなのが面白い。絶対役者本人(ジャン=ルイ・トランティニャン)の名前から取ってるでしょ笑

カメラとの、ある種非映画的な戯れ方も面白かった。冒頭の鞄を買った直後からずっと、エリアスも他の役者も平気でカメラ目線をするし、何なら追ってくるカメラに気づかれないようにチラリチラリを視線を向けたりする。大抵の映画においてはカメラは透明人間的な立ち位置だと思うんだけど、別にカメラに人称があてがわれているでもないのに登場人物たちがカメラを見るのが新鮮。

あと、映画は「カメラに映ったものが真実である」という見方をされがちだと思うんだけど、空想シーンでも何でもなく普通にカメラが捉えた「真実」があっさり否定されて物語が別のレールに移動するのも楽しい。港で散々捨てたはずの包みを、直後にマチューと再会して居候先が決まる場面では何食わぬ顔で抱えている辺りは笑わずにはいられない。

他にも、取調シーンで刑事たちの声にかかる不自然なエコー(と同時にカメラ目線も)、映画監督とその助手役として物語をかき混ぜるロブ=グリエ夫妻、マチューの部屋の『ロシアより愛を込めて』のポスター、座席車の廊下の大窓から外を眺めるサングラスを右手に持った訳ありげな美女がマジで全く本編に関係ない辺りとか、面白かった点を挙げるとキリがないし、ロブ=グリエとトランティニャンの蜜月の始まりを告げる映画でもあるので、わりと本当に必見だと思うのです。