ダワーニャミーンビャンバドルジ

アベンジャーズ/インフィニティ・ウォーのダワーニャミーンビャンバドルジのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ルッソ兄弟は本作におけるサノスについて「聖なる戦士のようなもの」と表現し、その態度を「高潔」と表現した。MCUを通して何度かその気配を漂わせてきた"最強の敵"サノスだが、本作において彼はむしろ時折見る者の共感を誘うような表情を見せる、というのは、恐らく多くの観客が共有し得る認識の一つであろう。故郷を失い、その悲劇を繰り返させまいとする大義の為に(本人の良心が痛んでいたかはともかく)虐殺を繰り返し、その大義の大きさと自身の行為の不可逆性故に自らの最愛の娘にすら手をかけざるを得なかった男の悲愴は、傷つきながらもその大義を達成し、どこの星とも分からぬ小さな家の椅子に腰掛けた彼が眼前に広がる雄大な自然、彼が救った世界とその未来を眺める、その優しい眼差しの中に初めて救いを見出せる。

そして偶然か意図したものか、このサノスというキャラクターは、本作を通してアベンジャーズというヒーロー群の半数を無に帰したマーベル・スタジオそのもののメタファーと取れる。作中の宇宙同様、MCUにも「ヒーローを増やしすぎ」という批判が一部から飛んでいたわけで、そんなMCUの「バランスを保つため」 斯様な超展開が生まれたというのは大いに考え得るものではないか。

まあ、マーベル・スタジオがサノス同様「性別や年齢、貧富を問わず公平に」対象を選んだかどうかは怪しい。『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』『アントマン』『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』を監督したルッソ兄弟の手によってMCUに産み落とされたキャラクターの内、今作でサノスの計画の犠牲となったのはバッキー・バーンズとサム・ウィルソン/ファルコンぐらいのものではないか。長らくシリーズの中核を担ってきたトニー・スターク、スティーブ・ロジャース、ソー辺りは当然の如く生き残り、『ブラックパンサー』の続編に新規性を見出し難いティ・チャラ、独立して1つの作品を背負うには些か華に欠けるサム・ウィルソンやワンダ・マキシモフらをあっさり切り捨てたマーベル・スタジオのリストラは、次作あるいはそれ以降のシリーズ展開を見据えた"for the plot"ならぬ"for the series"的なものと言えよう。

もっとも、今作であっさり切り捨てられたスパイダーマン/ピーター・パーカーやスター・ロード/ピーター・クイルたちGotG一行に関しては続編の製作が決定しているので、次作辺りでサノスからタイム・ストーンを取り返して使うなりして生き返らせるんだろうし、MCUのリストラ的な見方はそこまで正しくないのかもしれないけれども。

平等性を欠いてサノスのような高潔さすら見受けられなかった前述の取捨選択を抜きにしても、ヒロインの死を知ったクイルの暴走やソーの詰めの甘さなど、明らかに"for the plot"と受け取れるような展開の拙さも目に付いた。MCU10周年を飾る記念碑的作品として、シリーズを追い続けてきた者にとっては十分楽しい作品であったし、別に「衝撃の結末」を貶したいわけでもないが、そこに至るまでのプロセスには不満が残る。