Kevin

マギーズ・プラン 幸せのあとしまつのKevinのレビュー・感想・評価

4.0
ニューヨークの大学で働くマギー(グレタ・ガーウィグ)はある日、妻子持ちで小説家志望の文化人類学者ジョン(イーサン・ホーク)と恋に落ちる。
遂に離婚を決意したジョンはマギーと再婚し、リリーという娘も授かり幸せな生活を送っていた。
ところが数年後、ジョンへの熱がすっかり冷めてしまったマギーは結婚生活に不安を感じるようになる。
そして彼女はふと常識外れの計画を思いつき、ジョンにバレないよう事を進めるが...。

幸せも喜びや悲しみ、憎しみや苦しみなどと同じように有限ではない。
誰もが心の何処かでわかってはいるが、誰もが無限であると信じたいはずだ。
本作はそんな脆く儚い“幸せ”のその先を、マギーという一人の女性の人生に沿って描いた作品である。

耳触りの優しい軽快なノリの音楽が心を刺激し、何とも心地よい。
作品の雰囲気も非常に好みで終始楽しく観れた。
また、力のあるキャストの安定感により、作品に集中して向き合うことが出来た。

本作を一つ上の質に上げた要素はなんといってもグレタ・ガーウィグ演じるマギーのキャラだろう。
もちろんイーサン・ホークやジュリアン・ムーアの力も充分作用しているが、彼女抜きではこれほどまで素敵な作品にならなかった。
純粋で真面目で人思い。それでいてどこか抜けている。
そんな彼女に惹かれまくりだった。

だが彼女が異性と長く続かない理由もなんとなくわかる気がする。
言葉では上手く説明出来ないがどういう訳かそんな気がしてならない。
自立しすぎてしまっているのだろうか。
とにかく見事に独身の女像を演じきっていた。
観客が女性ならば間違いなく彼女に共感できるだろう。

だとすると男ならば誰に共感できるか。
そう、イーサン・ホーク演じるジョンだ。
万人が万人、彼に共感できるとも思えないが少なくとも自分はできた。
好きな人と居る時も一人の時間が欲しいし、家事も頼みたいし、自分のやることに集中したい。
むしろ一人の時間の方がよっぽど欲しくてたまらない。
男は大体そうだと思う。
その共感できた彼が上手くいかない姿を見せらたのだから少し落ち込んでしまったのだが。

恋愛について何も知らない自分が言うのは恥を承知で、改めて「恋愛は難しい」と思った。
熱したと思えばいつの間にか冷めている。
些細なことで突然終わりが来ることもある。
だから結婚はある意味一種の賭けなのだ。
その危険を冒してまで結婚する意味は当然の如く“好きな人とずっと一緒に居たい”だろう。
ところがこれまた一種の“ステータス”として欲している人も少なくないと自分は思う。
よくいる、相手もいないのに「結婚したい結婚したい」という人には正直虫唾が走る。
何をもって結婚したいと思うのか。
そういう人は大体、理想と現実の間でもがくのがオチだ。
恋愛と結婚は全くの別物。
後者の方が圧倒的に難しい。複雑な家庭を近くで見てきた自分には少しわかる。
だからこそいつまでも上手く支え合う夫婦は素晴らしい。

僕らの生活の中には数多くの大小様々な幸せがあり、それと同時に失っていく幸せも常にある。
幸せが日常化して気づけていないだけで、人生は小さな幸せの連続だと思う。
それらを失うことにより悲しみなどの感情が生まれるのだ。
負の感情の方が感じ慣れていないため強く感じるが、殆どは幸せの中から生まれるのだ。

その壊れた幸せのあとしまつをしている最中、マギーは新たな幸せの欠片を見つけ出せたのである。

終わり方も非常に好みだった。
自己中すぎな気もするが、好きな作品になったことに変わりない。
Kevin

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