こたつむり

アナイアレイション -全滅領域-のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.5
♪ 覚醒されたのは失くしてた傷跡
  この身体が奪われてく

ブリガドーン、あるいは『首都消失』系。
つまり、正体不明の何か(霧とか雲とか磁場とか)で一定の地域が隔離されちゃう系。見慣れた風景が簡単に異世界になるから、こういう系統は怖い作品が多いですよね。

それは本作も同様でした。
確実にB級映画(主演がナタリー・ポートマンなのに!)の範疇ですが、地味に、いや派手に狂っているので、ゾクゾクが止まらないんです。

例えば、人の形をした花…とか。
例えば、ワニの歯並び…とか。
例えば、肌に咲く無数の芽…とか。
文字にしてしまえば“出涸らし”のような演出ですが、リアルを超えたリアルを感じました。

たぶん、発想の立脚点がヤヴァイのでしょう。
「何が観客に不快な感情を抱かせるか」を突き詰めたうえで描いているから、ビジュアル的にも精神的にも“グロテスク”なんですね。

そして、そこに“理由”はありません。
確かに世の中のすべての事象に“理由”なんてないですからね。それは人間が安心するために便宜上で設定したもの。そうしないと人間はおかしくなってしまうのです。

仕上げたのはアレックス・ガーランド監督。
『28日後…』や『サンシャイン2057』の脚本を執筆した経歴をお持ちです。監督としては『エクス・マキナ』を撮っていますね。SF系が得意なのも納得です。

まあ、そんなわけで。
尺は長いし、派手なアクションは少ないし…ということで、見た目は眠くなりそうな作品ですが、根底に流れている“奇妙な感覚”に着目すれば鳥肌が止まらない物語。期待値は低めにしておいた方が吉です。

ちなみに日本人ならば演出に既視感を抱くかも。
と言うのも、全国民必読の書である“アレ”の第六部を彷彿させる展開があるんですね。勿論、時系列で言えば“アレ”のほうが先に発表されていますんで…先見の明に感服する次第です。

生まれてジュルリ!
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