くまちゃん

SING/シングのくまちゃんのレビュー・感想・評価

SING/シング(2016年製作の映画)
4.0
冒頭のキャラ紹介はテンポがよく、
それぞれの抑圧された私生活に感情移入しやすい。

「どん底に落ちるのも悪くはない」
「行先は一つしかない、上にあがるだけ」
ポジティブなバスターらしい言葉。
しかしそれだけでは夢は叶わない。

私生活と夢、二足のわらじを履いた覆面生活はどこかで必ず、歯車が噛み合わなくなる。
それはバスターのメッキが剥がれる前兆であり、劇場の倒壊はアメリカンドリームという幻想の崩壊を象徴する。

ミーナの鼻に楓の葉が付着する。
それはミーナが葉を落とした木の残り。
楓の花言葉は「調和」「遠慮」「大切な思い出」そして「美しい変化」
まさに今のミーナを表しているようだ。
極度の恥ずかしがり屋で周囲に遠慮し、流されてしまう。しかし、クライマックスの舞台で見事自分の殻を破り、美しいシンガーに変化する。
その圧倒的な歌唱力、表現力は、最初に彼女のチャンスを遮ったマイクが帽子を脱いだ事からもわかるだろう。
自分が一番だと考えていたマイクが
ミーナの歌唱に敬意を表したのだ。
もしかすると、普段使用しているヘッドホンや聴いている曲、歌そのものにも「大切な思い出」があるのかもしれない。

ロジータのダンスの練習法は、
蛇拳(ジャッキー)の歩法の鍛錬法と一緒。

ジョニー、まじ、エルトン・ジョン。

ブタやゾウなど人間で例えるといじめや差別になりかねない動物を、人間的にも女性的にも魅力豊かに描かれ、擬人化であることを忘れてしまう。

主婦業に忙殺されてる人も、自己主張が苦手な人もこの世には溢れている。

親のレールから外れる勇気がない人も愛情と一方的な奉仕を混同してるティーンエージャーも山ほどいる。

金持ちのニートもきっといるだろう。

そんな君達も成功できる。それを伝えてくれるのが奇跡と魔法を兼ね備えた今作。
もともとない名声がさらに地の底深くに失墜しても上へあがってきたバスターのように、人生を好転させるのは考えることではなく行動のみ。
全てを失ったら洗車屋からやり直せばいい。
バスター・ムーンの名前にある月は開花前の誰かを照らし、いつかはスポットライトになる。
ステージにたったミーナも最後に月光に照らされたではないか。

最後に歌唱の物語で吹き替えに宮野真守をキャスティングしておきながら
メインでは歌わないキャラ
それに付随してオーディションでの一瞬の歌唱シーンを担当。
宮野真守のサブリミナル。
イルミネーション作品一贅沢な宮野真守の使い方に脱帽。
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