奈菜子

婚約者の友人の奈菜子のレビュー・感想・評価

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.0
「その真実の先にあるのはさらなる苦悩、さらなる涙だけだ。
汝の罪を許しなさい。
キリストが己を磔にした者を許したように」

WWⅠで婚約者を亡くしたドイツ人のアンナ
婚約者の友人を名乗るフランス人の青年アンドリアン
行き場のない想いが嘘になって絡み合っていく。モノクロ×カラーの映像美も相まってその過程にぞくぞくしました。
アンドリアンがアンナの婚約者の墓参りに訪れ、それをアンナが目撃するところから物語は始まります。
前半は彼が独りドイツへ、後半はアンナが彼を追って独りフランスへ。まるで鏡写しのような展開、そしてルーヴル美術館、モネの絵画作品「自殺」の前で迎えるラスト、全てが本当に見事です。「婚約者の友人」の正体が解っても、そこで終わらない、終わってくれない。
真実は必ずしも明らかにすべきでないという態度がオゾン監督の作品の雰囲気にはとてもあっている気がしました。惑わされたい、という気持ちで臨んだのは正解だったようです。

アンドリアンの宿泊するパブでは男たちがドイツ国家を歌い、アンナが立ち寄った喫茶店ではおもむろにフランスの軍歌が。
互いの言語を理解しあうフランスとドイツ、大戦後の互いへの憎しみがこんなにも激しかったのかと思い知らされました。
奈菜子

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