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青春残酷物語のutakoのレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
3.8
女子高生の真琴と陽子。街へ遊びに繰り出した帰りはいつも車を持つ男たちを誘い、家まで送らせていた。しかし、ある日、真琴は外車に乗る中年男にホテルへ連れ込まれそうになる。そこへ大学生の清が現われ、中年男を殴り倒し真琴を助けるが、二人の出会いはやがて破滅へと導かれる……。激しいラブシーン、即物的な描写などの衝撃が、松竹ヌーヴェル・ヴァーグという言葉を生み、興行的にも大ヒットした大島渚監督の長編第2作。(あらすじ引用)

60年安保闘争に混沌とする東京が舞台。
青春真っ盛りな年頃の真琴と清ですが、満たされず言葉にならない不安や怒りを抱えた描写が終始印象的でした。戦中、終戦直後に我慢を強いられ諦めの境地に居る冷めた父や姉と、自由奔放な真琴たちの対比。『時代は変わった』はずなのに、何からどう変わったのかがわからないとでもいうような、過去と現在が入り乱れた曖昧な空気を帯びた社会で、「自分はモノのようだ」と落胆し、惹かれ合いながら生や自由を持て余す若い二人が痛かった。
戦争経験がないため興味がある戦中・戦後を生きた日本人個々の内面を少し覗けた気もするけど、これはまた観て理解を深めたい作品でした。

リマスター版だったのでクリアな映像で、真琴の衣装の色彩が美しかったがゆえにラストは一層悲しくなった。
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