emily

サマリアのemilyのレビュー・感想・評価

サマリア(2004年製作の映画)
4.9
三部構成で、援助交際を通してバスミルダというインドの娼婦のように男性達を癒していくチェヨン、その友達で売春には反対のヨジン。しかし二人が揃わないとその行為は成り立たない。第2章はサマリア。チェヨンが亡くなり、ヨジンがその仕事を引き継ぐように男性と性交渉し、お金を返していく。第3章はソナタ。娘と寝た男達を見つけ次々と制裁を与えていく父。しかしそれが行き過ぎる結果になり娘と旅に出る。

社会的な援助交際と言うテーマを掲げながら、そこには宗教が深く関わっており、人間の弱さを、そしてそれによる狂気の変貌も、すべて美しく切ない秋の風情のように、消えていくように赦しを与えて与えられる非常に奥深さを見せる作品だ。

浄化するように汚れを落とし合う二人。男に癒しを与え、自らも救われていく。チョヨンの存在はなんだか現実味がなく、少女二人は二人で一つのような、切っても切れない深い関係であり、第2章ではそれが一つになったような印象も与える。

父との距離感も親一人子一人ならではの言葉にならない愛の深さ、それゆえの狂気、開いていく二人の距離感もしっかり深く繋がっており、そうしてお互いに赦し合う。

特に旅のシーンは色彩が悲しみを、切ない秋の情景がまだ見ぬ未来を助長している。無知という罪が、また愛という罪が変貌する。最後にはその罪の深さに向き合う現実の厳しさを、親子の距離感で見事に描ききり、不穏な余韻を残す。なんとも残酷に美しいのだ。人間の弱さを投げやりにせず、しっかり抱きしめる、優しさがある。悲しさの中にちゃんと光があるのだ。
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