むさじー

未来よ こんにちはのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

未来よ こんにちは(2016年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

<俗事に振り回される哲学女史の凛とした生き様>

50代の哲学教師ナタリーにとって信じていた思想は時代遅れになり、添い遂げるものと思っていた夫は新しい愛を求めて家を出て、かつてはモデルとして美しさを求め、自分を愛してくれた母は認知症の末に死を迎えた。
変わらないはずの知識や思想を基に生きているつもりだったが、日々現実は変化していて、その現実がもたらす俗事に流され、置き去りにされようとしている自分に気付く。
しかしナタリーはしっかり現実と向き合い、決して悲観的にならず、確固とした自分のまま、淡々と生きていくというストーリー。
猫が象徴的に描かれている。
都会のオリのような暮らしから、山荘の自由の中に放たれ、生きていく不安を抱えながらも伸び伸びと暮らし始める。
ナタリーは猫ほどに自由ではないが、今まで不変と思えていた知識の世界から一歩踏み出し、現実と折り合いをつけながら歩き出した感がある。
淡々とし過ぎた展開でドラマチックな盛り上がりに欠けるが、テンポ良く日常が描かれ、ユペールが演じる凛として知的で、決してブレない女性像に目を見張りつつ惹き込まれていった。
監督は若手(’81年生まれ)の女性で、突如現れる映画館の痴漢のエピソード、娘が父親の浮気を指摘するシーンなど、終始女性目線の映画という印象を持った。
また、多くの哲学書と哲学的なセリフが登場する、昔ながらの知的で理屈っぽいフランス映画でもあり、この高校の授業風景を見ていると、我が国にも「自分の頭で考える」教育が必要だとつくづく思う。
むさじー

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