るる

メットガラ ドレスをまとった美術館のるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

はー、なんだろな、情報量が多い。見応えがありました。

『プラダを着る悪魔』から十五年、最近になって『アドバンスト・スタイル』『ディオールと私』『ファブリックの女王』などなど、ぼちぼち見ながら、美しいもの、ファッション関係に触れるなら劇映画よりドキュメンタリー映画、と感じていて、レンタルDVDの予告情報を見て、これは、と思ってTSUTAYAで借りて見ました。(配信も活用するようになったけど、レンタルショップが好きです、なくならないでほしい)

ハイファッションには疎く、辛うじてブランド名を拾えるくらい。これで登場人物にも馴染みがなかったら大変だったかも。ジェシカ・チャスティン、ジュリアン・ムーア、リアーナなど、好きな女優、知ってるセレブが登場していたので、観やすかった。ビル・カニンガムなどの登場にもニヤリとできた。なにより、『プラダを着た悪魔』のモデル、アナ・ウィンターの映画として面白かった。

ファッションはアートから除外されてきた、女性の文化として軽んじられてきたからだろう、という指摘は非常に刺激的だった。
『プラダを着た悪魔』について問われたアナ・ウィンターが苦笑まじりに「人々がファッションに目を向けるきっかけになったのは良いことだと思う」と答えたのも興味深く。そうだ、たしかに、あれはファッション映画のエポックメイキングだった。
映画や演劇には衣装賞があるけれど…観客はどれだけ映画内のファッションに注目してるだろうか。面白い。

米国と中国、ファッションと映画を通じて、中国資本と手を組んだ現在のハリウッド映画業界の関係も見えてくる、興味深いドキュメンタリー映画だった。

しかし、アメリカのトップアーティストたち、随分と無邪気に「文化の盗用」をやるんだな!?という印象。この感覚ならポリコレのせいで窮屈になった、というクリエイターがいるのもわかるかも、配慮することが多くて自由な発想が阻害されてしまう、ということなのかもな。

だって、「実際に中国に行く必要はない。映画を見ればいいのだから」なんて、凡人なら思ってても恥ずかしくて言えないよ!? あくまで幻想の中国にこだわるならなおさら、実際の中国を見たうえで、自国の映画文化がなにをしてきたか、西洋と東洋の関係を理解した上で幻想を描かないでどうするよ!? 無知を振りかざす暴力性に対して無頓着すぎでは!?

東洋趣味だと批判されてしまうことを恐れている、っておまえ、だって、やってることが東洋趣味そのものじゃねえかよ!? 毛沢東と仏陀を同列に並べ…思いついても、知識があったら真面目に言うか!?と。「なんでも政治的に捉えられてしまう」…だって、国際的な文化活動は大なり小なり政治的な行為だもの!

でもちゃんと、それはまずいよ、と指摘するひとが仲間にいるんだよね。そこが日本と違うというか…自由な発想でクリエイティビティを発揮するひとに、商業的に誘導するひとがいる、大事。超大事。

世界最高峰の美術館のキュレーターによるマネジメント、ヴォーグ編集長アナ・ウィンターの大プロジェクトを追った、お仕事ドキュメンタリーとして、アートとビジネスの金言が詰まってるのも贅沢。

リアーナがアメリカンドリームを背負ったスターだという指摘にもなるほどなと。黒人の女の子が大スターに、なるほどな。

しかし各界セレブが集まったパーティー…いかにも世界最高峰の一握りの金持ちが集まる場、という感じがして、ちょっと辟易したな…東洋人として、中国に大きく水をあけられてしまった日本人としては、こいつらに文化や経済や政治を牛耳られてるんだな…と僻む気持ちにどうしてもなった。『キングスマン』を連想してしまった、わたしあれを悪趣味だとは思わなかった、必要なフィクションだと感じた側の人間なので…そういう断絶は感じた、無邪気には憧れられない

いろんな意味で圧倒された。ファッションや化粧品を扱った日本映画、どれだけあるだろう、女性プロデューサー、女性監督に頑張って企画してほしいなと思った。
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