ひろぽん

インディ・ジョーンズと運命のダイヤルのひろぽんのレビュー・感想・評価

3.6
『インディー・ジョーンズ』5作目

1944年、インディはナチスが略奪した秘宝「ロンギヌスの槍」を友人の考古学者バジルと共に奪還しようとする中、ナチスの科学者フォラーが偶然見つけたもう一つの秘宝「アンティキティラのダイヤル」を偶然手に入れる。 時が経ち1969年、アメリカはアポロ計画の月面着陸を成功した最中、インディは旧友の娘ヘレナから話を持ち掛けられたことをきっかけに、かつて手に入れた「アンティキティラのダイヤル」の調査を依頼される。同時期に元ナチスの科学者フォラーもインディに奪われたダイヤルを取り戻すべく、ナチスの残党と共に動き出そうとしていた。果たしてインディと秘宝の運命はどうなるのかという物語。


最新のAI技術により若かりし頃のインディを再現した列車でのスピード感溢れるハラハラドキドキのアクションシーンから始まる冒頭の緊張感が凄い。列車の屋根上という落ちそうな場所で必死に戦うインディを手に汗を握りながら応援していた。

AIによってハリソン・フォードの見た目が30代の頃に若返る演出には興奮した。

敵ボス役にマッツ・ミケルセンという色気のある最高の悪役を抜擢している点も良かった。ナチスの制服がよく似合っている。

全体の5分の1の時間が冒頭の若かりしインディの回想シーンになっている。

回想が終わってから登場する80代の悲壮感漂う孤独な年相応のおじいちゃんになったインディ・ジョーンズ演じるハリソン・フォードの背中から漂う哀愁。全盛期のイケイケだった面影は全くなく、気難しいおじいちゃんになっていたのが残念だった。

大学の授業では慕われていたインディも今ではその面影すらない時代を感じさせる演出。

息子には戦死して先立たれ、妻のマリオンとは離婚間際で、大学の教授としての仕事もいよいよ退職という世間から完全孤立した存在にまで成り下がったインディの姿がとても切なくリアルだった。

いざ、冒険が始まると生き生きと輝き出す老人が織り成すアクションシーンの数々を観ると、やっぱりかつてのインディ・ジョーンズが帰ってきたんだと実感する。

狭い街中でボロボロになるまで繰り広げるトゥクトゥクチェイスが最高だった。

その一方で、旧友の娘でありインディが名付け親であるヘレナと、その相棒のテディのキャラが全く好きになれなかった。金に目がなく金のためなら何でもする悪女ヘレナと、子どもからでも盗みを働くスリのプロ・テディはインディと共に謎解きをしていくが魅力が最後まで感じられなかった。

終盤でタイムトラベルした紀元前212年の世界に残ろうとしたインディの選択が切ない。考古学者として過去に取り憑かれていた男が、居場所のない現代から遥か時を遡り、死に場所を探す。考古学者の名誉で、幸せな選択なのかもしれないが、過去に固執し今をトコトン生きれない男の現実逃避のようにも感じられる行動だった。

ラストはマリオンと綺麗な形で幕を下ろす素敵な演出だった。

80歳の老人がアクションをひたすら頑張っている姿はとても良かった。ただ、ワクワクするものはこの作品から何も感じられなかった。ハリソン・フォードが演じるインディ・ジョーンズを観れるのもこれで最後だと思うとやっぱり寂しい。
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