グラッデン

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.2
多くの方が同様の感想を抱いたと思いますが、予告編等で「鋼鉄ジーグ」の名前を目にした時には何故?イタリア?と数々の疑問符が頭に浮かび上がりました(汗)

しかしながら、鑑賞を終えた後には違う意味での衝撃を覚えました。なぜなら、本作がイロモノや変化球と思わせて超人ヒーローの苦悩と成長を物語に織り込んだ「胸熱」直球勝負だったからです。

昨年鑑賞した『マジカル・ガール』がそうであったように作品の題材に日本のアニメーション作品を記号的に取り扱うのではなく、作品の中に潜むテーマや構図を映画の中に織り込ませていることからも、作品に対するリスペクトを感じさせることは素直に嬉しいと思います。

一方、アメコミ原作の映画が活況を見せていることもあり、スクリーンで躍動するヒーローを見る機会は増えてきたと思います。しかし、近年の作品を見ていると、ヒーローたちの超能力とは違った意味の浮世離れした感覚にも陥ることがあります。もちろん、作品の背景において社会性を織り交ぜて敵対する構図を描いているのは理解しているつもりですが、どこかで別世界の出来事のように感じてしまうことがありました。

鑑賞後に開催されたトークショーにおいて松江哲明監督、高橋ヨシキさんも言及されていたところですが、本作の大きな特徴は人物・街並みの描写に代表されるような生活感を伝えるような作りにしていた点ではあります。頭の中に思い浮かぶようなローマの情景はほとんど映されることなく、超能力を手にした主人公の行動(マイルドに表現すれば)人間味あるものでした。

さらに、偶然手にした能力以外は未熟なままの主人公、様々な意味の喪失を抱えるヒロイン、自分の求める欲求に貪欲なヴィランの三者に共通していたのは、欠落を埋め合わせる存在を求めていたことたと思います。その中での苦悩や変化を丁寧に描いた点も非常に良かったと思います。

日本にルーツを持つイタリア生まれの新たなヒーローの誕生を見逃すな!