冒頭シーンが秀逸!
こんなにも主人公の得体の知れなさを印象付ける方法があったかと感嘆。
主役である妻夫木氏演じる雑誌記者・田中武志の取材で
田向家事件の真実が炙り出されていく物語かと思わせつつ
違った方向へ進むのも面白い。
せりふは(特に核心部分において)かなり削ぎ落されており映像も間接的な表現が多用される。
流れからどこまで推量できるかが本作を楽しめるかどうかに直結すると思う。
しかし物語はかなりかなりかなりわかりやすいのでバランスは取れている。
そして光子を演じる満島ひかり氏の良さを存分に生かしたことをはじめとするキャスティングの妙も見どころ。
(以下ネタバレあります。)
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全体的に重い映画だが
何より絶望的なのは
事件を起こした側も殺害された側も「上位階級者」ではない事。
日本社会の「階級制」はどうあがいても覆らないことが前提とされているかのようだ。
直接的な悪行が画面では描かれない、常に笑顔の友季恵。
外部生でありながら学内であそこまで地位(笑)を得た彼女も
結婚相手は「イエガラを前提とした上位階級者」ではなく「成り上がりを目指すレベル」の田向であり、彼女らが住む家(そして殺される場所)も「高級」住宅地とは言えない場に建つという皮肉。
そんな友季恵は光子により自らの行いの落とし前をつける結果になったが、他の光子を追い詰めた「上位階級」の者たちはきっと光子の事などすっかり忘れ、大量の光子を新たに生み出しながら今日も笑って過ごしている。